あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

鈴木弘尚 ピアノリサイタル

2005年9月22日(木)19:00開演(18:30開場)紀尾井ホール

バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV.903
スクリャービンピアノソナタ第5番 作品53
カール・ヴァイン:ピアノソナタ(1990)
ラフマニノフ:練習曲「音の絵」より
 作品33−2 ハ長調、作品33−5 ニ短調
 作品39−2 イ短調、作品39−9 ニ長調
シューマン:交響的練習曲 作品13

アンコール
 シューベルト:水車小屋と小川
 ヒナステラ:アルゼンチン舞曲より やくざなガウチョの踊り

ピアノ:鈴木弘尚


 久しぶりのピアノです。ピアノリサイタルを聴くのは3ヶ月ぶりくらい。エリック・ルサージュのリサイタルを聴いて以来のことです。個人的な趣向としてオケが好きなんで、そっちばっかりなんですが、値段も安いし、ピアノもイイですよね。
 演奏者の鈴木弘尚について、多くを語らなくてもイイでしょう。と言えるのは余程のウォッチャーでしょう。簡単にご説明を…。

1978年 埼玉県所沢市生まれ。
3歳からピアノを始め、1990年よりヤマハマスタークラスに在籍。NHK趣味百科「ピアノで名曲を〜バッハからプロコフィエフまで」に出演。
1998年 第14回園田高弘賞ピアノコンクールにて園田高弘賞(第1位)受賞。2000年 第52回ブゾーニ国際コンクールにて第6位受賞。
2003年 第5回浜松国際ピアノコンクール第5位入賞、本選で大友直人指揮・東京交響楽団と共演。この時の模様がNHKドキュメンタリーで取り上げられて脚光を帯びている。と言った感じです。それで現在、内外問わず活動を開始。といったところでしょうか。
熱心なヒトが読んだら怒りそうだなぁ(冷汗)。
詳しくは鈴木弘尚さんのHPで見てください。
http://www.hironao-suzuki.com/

 ちなみに断っておきますが、以後、敬称略で(笑)
ともかく、中村弘子絶賛だったわけです。余談になりますが、管理人は中村弘子、ショパンは確かにイイと思いますが、ドイツ物にはあまり適性を示さない気がします。オケ好きとしては協奏曲が良くないと、自分の中でのランキングはあまり…と言った感じです。その点、伊藤恵は共演者によってホントに「化ける」から面白いですね。
 会場の紀尾井ホールは四谷にあるんですが、かなりイイホールです。豊かな残響と暖かみのある響きが特徴ですね。室内楽や、ピアノくらいならこれくらいのホールで聴くのが贅沢。ちょっとした悩みは、食事に困るところ。プリンスホテルやニューオータニがあるんですが、値段ばっかり高くて、安心できません。食事処が少ないというわけですね。
 さて、演奏に入りましょう。プログラムでも明らかなとおり(HPでも同様)、鈴木弘尚はロシア流儀のピアノ弾きです。ロシアのピアノ弾き、といえば、すぐに僕なんかはリヒテルを思い出してしまうんですが、それとは全く違いますね。
 ロシア圏のピアニストはその演奏スタイルに華のある人が多いんですが、この人も例にもれず、華のあるピアノを弾きます。「華のある」と聞いてピアノを聴かない人はピンを来ないかもしれませんが、演奏している時の姿がキレイ(流麗という方向)であると言うことです。べつに単なる容姿端麗ってコトじゃないですよ。でも、雰囲気、というかオーラというのが、見ていて華やいでいる、っていうことです。
 それと同時に、ダイナミズムですね。ルガンスキーもそうですし、迫力があるのがこのひとたちの売りです。
 ただ、一番凄いと思ったのは、ロシア流儀のピアニストの欠点としてある内省さの欠如というものが微塵も感じられない。むしろ、曲に対する深い考察と理解が感じられたところです。とりわけ、このヒト、考察というよりむしろ内省、っていうかんじの方が強い。音楽をネタに哲学しているみたいなそういった知性感が20代にして可能なのか!?と思わせられます。
 バッハはやっぱり対位法というかその形式美みたいなところをもっとクリアにする必要があった気がします。ちょっとロマン派っぽい感じで、僕は採りません。でも、ヴァイン以降は素晴らしかった。ヴァインはこの曲に対する自信感じられ、自分の中に隅々まで消化している印象を受けました。現代音楽なんですが、特有の難解さはなく我々に届くその手腕は見事です。
 シューマンは鈴木弘尚に一番相性が良いんじゃないかと思わせられた。確かにドイツロマン派なんですが、内面的な部分でシンクロできるからなんでしょう。フレーズの意味や対比が非情に鮮明に現れていて、陰陽に溢れたきわめてシューマンらしいシューマンです。

 充分満足しました。都響でピアノ協奏曲してくれないかなぁ。シューマンとかラフマニノフの協奏曲第3番とか弾いたら面白いんじゃないのかなぁ…。と思いました。将来的にはベートーヴェンも面白くなりそうですね。