あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

師弟を結ぶ旋律の臍帯@都響定期演奏会より

東京都交響楽団第620回定期演奏会

2006年1月19日(木)19:00 サントリーホール

サントリーホール20周年記念参加公演》
メシアン:キリストの昇天(1932-33)
別宮貞雄:チェロ協奏曲「秋」(1997)
別宮貞雄交響曲第2番−O.メシアンに捧ぐ(改訂版舞台初演)
メシアン:微笑み(1989)

プレトーク:作曲家・別宮貞雄が語る「我が師メシアン」(18:35〜18:50)

指揮/若杉弘
チェロ/向山佳絵子


 ここ2、3年は鳴りを潜めていましたが、またここに来て都響ならではの邦人作曲家特集。仮に都響がその独自性を発揮すると言えば、こーいった企画を毎年一回はやらないといけないのかな、と思う。
 あと、東京芸大の学生らと何かするとか、若手演奏家を積極的に取り上げてみる、とかもよさそうだ。ともかく単純な営利だけじゃない活動をすることが自治体オーケストラとしては重要だろう。
 何で、いきなしこんなコトを書いてみたかといえば、案の定、客足はそんなに良くなかったから。
 定期会員の分で座席が結構と埋まるのは(日本フィルとかに比べれば)都響ならではで大したもんだけど、一回券の座席(サントリーホールだとP席)はガランガランだった。
 どこぞの掲示板じゃないが、今日もホールはがらがらだったよ、みたいな虚言癖のある人物の書き込みがあるから、正直なところを管理人が報告をするのは悪くないと思う。
 一回券のみの販売となるP席はもうビックリするほど空いていた。ま、あんまりイイ座席じゃないからねぇ。管理人もP席のそばで聴いたことあるけど、バランスが悪くて変な感じだった。
 他のオーケストラが邦人作曲家を取り上げるのは採算ベースからも、集客からも殆どやらないから都響のこの取り組みは重要だと思う。
 それに邦人作曲家だと、海外ではもっぱら武満徹ばっかり取り上げられるのだが、ホントに幅広く取り上げている都響の姿勢は素晴らしいと思う。
 管理人はハッキリ言って武満の音楽は肌に合わない、っていうのもあるんですが。
 日本に音楽はあったが、純粋芸術対象としての音楽は存在しなかった、と管理人は考えている(鎌倉時代以降、その傾向は顕著になったと思う。武士の合理的精神が芸術としての芸術に重きを置かなくなった、というのが原因だろう)のでその日本的な音楽を五線譜に書き表した武満の功績は空前絶後の偉大さだとは思う。でも聴いていて飽きてしまうから仕方がない。

 さて、演奏そのものだけれど、若杉のタクトの下、よく統率がとれたと思う。メシアンの2曲は初めて聴いた。「キリストの昇天」は冒頭の金管のコーラルから美しい。神々しさが伝わってくる。メシアンってトゥーランガリラ交響曲みたいなのばっかりかと思っていたら大間違いだった。
 メシアンごめんよ。何だか随分と勘違いしていたみたいだ。と思わせられた(笑)。


 さて、弟子の別宮貞雄(1922年生まれ)だが、東大で物理学を学んだ後、作曲家になったという異色の音楽家。プレトークに依れば、理論物理学をやった本人にしてみれば、調性のない現代音楽はその理論の空虚さ、浅薄さが一目瞭然で、ゆえに、「うた」の無い現代音楽など音楽ではないと思ったそうな。だから別宮氏は一貫して「うた」のある音楽を追い求め続けてきた、というのである。
 そうした別宮のチェロ協奏曲。「秋」とついているから当然、春と夏もあるのかと思えば、春夏共に交響曲らしい。(冬は?)
 ベートーヴェン以降の協奏曲と言うよりは、ハイドン以前の協奏曲みたい。チェロがソロで弾くところももちろんあるんだけれど、オケが伴奏していることが結構多くて、それにチェロが弾いている感じ。だから、オケを伴奏にチェロが「歌っている」と形容すれば適当か。チェロの向山もそうしたチェロによる「うた」という趣旨(だとすれば)にとても良くあっていた。
 続く交響曲は、第1楽章は伊福部昭か!?と思わせる。どっちかと言えば、土俗的なメロディ。でもその後に続く展開部を聴くと、ああ、やっぱりメシアンの弟子だ。と思わせる和声の使い方をしていた。響きが似ているんだよね。というより似るのは当然か、とも思う。
 ただ、第3楽章まで聴き終わると、やっぱりこのヒトも「うた」を大事にするとはいえ、20世紀の作曲家だなぁと思う。メシアンもそうだけど、ストラヴィンスキーショスタコーヴィチらの上に現代の音楽が成り立っている(それ以前の音楽の上には成り立ってないという意味ではない)と思わせられた。
 ただし、第3楽章、ヴァイオリンがちと練習不足。弦の刻みが細かい上に動きが多いから大変だろうけど、ここでみんな揃ってくれないと、聴いていて興ざめしちゃう。頑張っているのは分かるんだけどね。


 最後のメシアンの微笑み。若杉は狙ってこの順番に持ってきたんだろうけど、この人のプログラミング、よく考えているんだけど、聴いた後の充足感に不足する。これは決定的欠点ではないか?
 「知の人」とプログラムに評が載っていたが、アタマの方に多少偏りすぎていて、感性や情緒という面を軽く考えていないだろうか?以前もブラームスか何かで弦楽四重奏曲のオーケストラ盤をラストに持ってきたんだけど、迫力に不足するから、なんだか拍子抜けしてしまう。
 マーラーとかはとてもイイ解釈をしてくれるんだけどね。昨年度のベートーヴェン交響曲第1番と第3番をやったときも、1番の方が出来が良かった。3番は無難なんだけど、そこで終わっちゃう。スケール感に欠けるのが良くない。もう70歳も過ぎたんだから、もう少しスケールが大きくても良いんじゃないかなぁ。
 誤解のないように言うけど、演奏は良かったんですよ。ただ、家路までの間、聴いた後の至福の時間に満たされるかと言えば、そんなことはなかった。なんか精進料理みたいなんだよな。若杉さんの場合…。


 ところで、サントリーホールいくと毎回思うのが、あのレセプショニストのバイト、仕事の内容とかどーなんだろう。楽しそうだなぁ…。と思いながら、管理人は、ウチからサントリーホールまで所要時間が1時間を超えるからバイトできないのです。バイトには遠すぎ。
 どんなもんですか?ってヒマそうなら訊いてみたいんだけど、管理人のチキンハートはなかなか実行できず…。見た感じ管理人とタメないし若いから音大生とかなのかな?
 なかなか会場で同い年くらいの人に会わないしねぇ。「自分もいました」的な方おられましたらお気軽に…。orz

今日やった曲目が収録されてます。まずは別宮さんの方。
メシアン:主の降誕,キリストの昇天

メシアン:主の降誕,キリストの昇天

キリストの昇天、って意外と少ないですねぇ。やっぱりトゥーランガリラ交響曲ばっかり。
こっちの方が分かりやすいし、イイ曲だと思ったんだけどな。