あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

凄いと言うから聴いてみた@ショパン・コンクール・ライブ2005山本貴志

山本貴志I

山本貴志I

 ショパンコンクールで入賞した山本貴志のCDを聴く。
 いや、なんで興味を持ったかと言えば、褒めてる記事を見つけたので、ちょっと気になったからなんだけどさ。
 凄いと言ったのは、ピアニストの鈴木弘尚(HPはhttp://hironao.exblog.jp/)。自身で綴る日記によれば、凄いと言うよりも、


本当に素晴らしかったです。
あれほどの心を持った日本人のピアニストの演奏を近年聴いたことがあったかどうか?

 ということなんだけど。まぁ、要は凄いってことでしょ。
 ショパンコンクールはその名の通り。
http://www.maxell.co.jp/chopin/contest/index.html
 審査対象となる課題曲はオール・ショパン。他のコンクールでは課題曲は選べたりするんだけれど、ショパンコンクールの場合はそうはいかないみたいですね。
 ショパンコンクールといえば、ポリーニアルゲリッチブーニン、なんかが一位を獲ってますね。日本人では中村紘子内田光子横山幸雄とかかな。もっとも、日本人で最高位は内田光子の第二位。
 でも、あくまでも「ショパン」コンクールだからなぁ。「ショパン弾き」であっても、ベートーヴェンモーツァルトはまた別だと思う。私見だけれど、管理人は中村紘子ベートーヴェンは全く採らない。以前出た、ベートーヴェンの協奏曲(全集になったか?)で5番「皇帝」を聴いたときは、ガッカリしたもんな。安心して聴けるのはショパンだけって感じするし。
 逆に内田光子ショパンコンクールでこそ二位だけど、今は凄まじいピアニストだ。モーツァルトのピアノ・ソナタやテイトが指揮をした協奏曲。あるいは、シューベルトの作品群。トドメはクルト・ザンデルリンクと組んだベートーヴェンの協奏曲。これらは文句なしに凄い。意地の悪い言い方になるが、ベートーヴェンの協奏曲を中村と内田で聴き比べてみればすぐ分かる。その後の研鑽の差なのかなぁ…。
 また、上位で入賞しても、パッとしないのなんかゴロゴロしている。その逆に下位入賞でものし上がったりね。典型的なのは1985年に5位で入賞したルイサダだろうな。
 この時の覇者はブーニンブーニンが凄いのは言わずもがな。なんだけど、2位から4位よりもその後の活躍は著しいものがある。
 だから、きっかけにはなっても、所詮はきっかけだとも言える。裏を返せばこれを上手く自分の糧にすればいいのだけどね。

ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝」

ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝」

 「ショパン弾き」っていうと管理人は(CDだけど)コルトールービンシュタインリパッティなんかの印象が強いです。今生きてるヒトだと、ブーニンルイサダじゃないかなぁ。

 その辺りが印象的なので、この山本貴志の演奏はちょっと意外だった。
 鈴木弘尚が「あれほどの心」という形容はまさにぴったり。舟歌の叙情性、非常に繊細な音楽。以前、鈴木弘尚のコンサートから受けた彼の理想とする音楽への志向からすると、山本貴志のこういった音楽性は非常に心の琴線に引っ掛かるんだろうと思う。
 もちろん問題点は、そこにあるとも言える。そうした美徳は言わばコインの裏表で、裏返すとショパンの情熱が後景に退いてしまう。
 ダイナミズムが不足するところがあるから、スケール感ある大きな音が出ない。俗っぽく言えばボリュームに欠けるのだ。
 それが端的に表れているのが英雄ポロネーズだろう。老大家ならいざ知らず、まだまだ若いのにあれでは大人しすぎる。
 老大家と呼ばれるピアニストがそれでも聴かせてしまうのは、怪しい言い方になるが精神性が深く、技術的ハンデが乗り越えられるからだろう。もっとも、晩年のルービンシュタインは大人しいなんてことはCDを聴いていて少しも思わないけど…。
 でも、ショパン弾きとしては目指す音楽性が面白いから頑張って欲しいなぁ。案外、ショパンよりもモーツァルトシューベルトに適性を示すかもしれない。曲は簡単だけど、モーツァルトのピアニズムを完全に表現するのは難しそうだけど。
 今回の覇者ブレハッチの演奏はそれとは対極。最初の一音を聞いて「ああ、ショパンの音がする」と思わせる。確かに、2位なしの1位なのは納得だ。ルービンシュタインの衣鉢を継ぐといえば大げさか。直接の関係はないんだけど、粒の揃った音、曲に対する構成感やスケールが似ている。
 ただ、今ブレハッチを聴くなら迷わずルービンシュタインを推すけどね。でも、期待の新星で良いのではないかな。

 モーツァルト・イヤーなのにショパンについてでした。

ショパン 24の前奏曲集

ショパン 24の前奏曲集

ショパン : ワルツ集 ― 全14曲 他ショパンの作品

ショパン : ワルツ集 ― 全14曲 他ショパンの作品

ショパン:ポロネーズ全曲

ショパン:ポロネーズ全曲

 このへんのお歴々は「自分の音」を持っていて一音聴いただけで、彼らの世界に吸い込まれる。凄まじい磁場を持ってるね。ちなみにコルトーリパッティはモノラル録音なので一般にはオススメできず注意が必要。でも、聴いて欲しいなぁ。
ショパン : バラード、スケルツォ、エチュード、他

ショパン : バラード、スケルツォ、エチュード、他

ショパン:17のワルツ

ショパン:17のワルツ

 最新のデジタル録音にして、同期の二人。天才肌のブーニンに対してルイサダは知性と感性のバランスが良いと管理人は勝手に思っている(笑)。この二人も自らのショパン像を塑造していて素晴らしい。