あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

浜松の覇者・再び@アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノリサイタル


彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール

日時: 2006年2月5日(日)15:00開演

ハイドン:ピアノ・ソナタ 第32番 ロ短調 Hob.ⅩⅥ-32
ブラームスパガニーニの主題による変奏曲 イ短調 op.35
ムソルグスキー組曲展覧会の絵

アンコールは以下の通り

モシュコフスキー:スパークル
ラフマニノフ:プレリュード 嬰ト短調
ラフマニノフ:プレリュード ト短調
ラフマニノフ(コチシュ編曲):ヴォカリーズ
リスト(ホロヴィッツ編曲):ラコッツィ行進曲
メンデルスゾーンホロヴィッツ編曲):結婚行進曲
モーツァルトヴォロドス編曲):トルコ行進曲


アレクサンダー・ガヴリリュク (ピアノ)


http://www.saf.or.jp/performance/geijyutu/05_37.html

(C) 2001-2005 Saitama Arts Foundation

 あー、アンコール、一曲抜けてますねぇ。何だったかな。8曲やったらしいんですけど…。まさかそんなにやるとは思ってなかったので油断してました。すいません。
 第4回浜松国際ピアノコンクールを16歳にして審査員満場一致の一位に輝いたウクライナの新星ガヴリリュク。あれから6年経って、今年で22歳になるのですが、いやぁ、凄かった。
 特に深い意味はなかったんですが、ショパンコンクールライブのCDを聴いたりしていたもので、良い意味で比較になったという気がします。
 浜松の優勝から一年と程なくして、交通事故にあって重傷を負ったという知らせから後遺症などが心配されたんですが、現在はそんなことを感じさせない素晴らしいパフォーマンスでした。ガヴリリュク、恐るべし。


 ハイドンは、管理人がそんなにハイドンピアノ曲に明るくないので何とも。交響曲ならまだしもハイドンピアノ曲って退屈感があって好きじゃないんですよね。だから疎遠になったままというか…。ただ、ガヴリリュクのピアノも「古典派」というフレームを意識してか大崩れさせない演奏です。古典派やっぱり形式美でしょう。それを生かすような演奏スタイル。しかし、モトの曲がつまらないな。
 交響曲弦楽四重奏は渋くて味わいがあるのに。
 ブラームスは思い切りの良さが光っています。もともと難曲とされていただけにそれが際だっている。ただし、弱音のペダルの使い方はもっと工夫の余地がありそう。ともあれみずみずしい感性ですよね。管理人は若い奏者だと、とかく「みずみずしい」という表現が好きですが、「枯れた」音楽が、長い人生経験の賜であって、それを獲得できるのが長い経験の積み重ねだけしかないとすれば、若い内のみずみずしさ、大胆さ、思い切りの良さは若者の特権でしょう。
 フォルテは非常に伸びやかに聞こえてます。ただピアノになると渋さに不足するというのかなぁ、全体的にブラームスのいぶし銀感とは違う演奏。「ブラームスっぽさ」を求めているとすればの話ですが…。
 ただし、この主題変奏の中盤辺り、客席の前方で咳き込んでいる女性がいて、管理人は演奏に集中できなかったということもあって、あまり何も言えないんですけどね。
 喘息なのか風邪なのかよく分からないんですけど、ともかく、咳が出そうなのなら予めマスクをしていってノドを乾燥させないようにするとか、ハンカチで口元を抑えるとかした方がイイと思う。
 もちろん、咳をするな、なんて非人道的なことを言うワケじゃないし、咳をするヒトに来るなとも言わないんですが、他の聴衆の人びとに迷惑を掛けないだけの自分なりの心遣いはあってもイイと思うのです。


 休憩を挟んで、ムソルグスキー展覧会の絵たけしの誰でもピカソでもこの曲の「プロムナード」が使われていたくらいですから、イントロを聴いただけでも万人が分かるポピュラーな曲。管弦楽バージョンはオーケストラの魔術師と呼ばれたラヴェルによる編曲でもともとムソルグスキーによる作曲はピアノ曲なのです。
 ともかく、しなやかで柔軟性のある演奏。ブラームスのように内省的な演奏が求められないので、今のガヴリリュクの持ち味が存分に発揮。
 粒の揃ったタッチと、ダイナミズムが非常に効果的に作用して聴き手を引き込みます。方向性は、一枚一枚の画に物語性を描出する方法なのですが、各曲へ移る際に、もう少し踏みとどまって欲しいですね。その方がもっとはっきりしたと思う。あれ、もう移っちゃうの?とちょっと戸惑ったですね。


 アンコール曲は、その量も(8曲優に30分は超えている!)さることながら、好きな曲を弾いているからとてもリラックスしていたようだ。
 やっぱり、ウクライナという文化圏からラフマニノフには特性を示しているように思う。メンデルスゾーンモーツァルトも編曲で賑やかになっているので、「ガヴリリュクらしさ」が発揮されていると言えばいいだろうか。
 ともかく、浜松の1位は伊達じゃないな、と思わせた。なによりコンサート経験は演奏の深化に寄与するところ大だから、このまま行けばブレハッチよりも良いんじゃないか。

Pianism

Pianism