あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

「そもそも論」の重要性〜『姜尚中の政治学入門』を読む

姜尚中の政治学入門 (集英社新書)

姜尚中の政治学入門 (集英社新書)

感想

 テレビのディベート番組を始めとして、マスメディアへの露出が多い大学教授と言えば数々いるのだが、そのなかでも姜尚中は筆頭だろう。
 姜尚中の他にも金子勝とかもテレビ出演の多い大学教授だといえる。
 もともと専門職か何かに就いていて大学教授というパターンとちがって、彼らはヘンな言い方をすれば「生粋の」大学人。
 それとともに、彼らの共通点はいわゆる「リベラル派」と世間では目されているということ。もっとも、金子勝の場合は「リベラル」に属するのか?と言う疑問も起こってくるのだけれど…。


 国際問題について発言が多いので専門は国際関係学だと思いがちだが、政治思想(マックス・ヴェーバー研究)が専門である。もっとも、ポストコロニアル理論から派生したアジア研究に興味があるようなので、純粋たる政治思想の研究者とも言い難いのかもしれないが…。
 そんな姜尚中現代日本政治を7つのキーワードで読み解こうとしたのが本書である。
 スタイルとしては、姜尚中自身の思考のあとを自身が分かりやすく解説してみせた、といったところだろう。
 つまり、現代政治を見る姜尚中の視点は彼が長年積み上げてきた政治思想から出発したものであり、細かなデータを駆使して考察したような種類のものではない。
 もっとも、現状分析なら細かなデータを駆使する、といった姿勢は必要だが「その後のどのように進路を選択していったらよいのか」という判断は政治思想に多分に寄りかかったものになるのではないだろうか。
 本書はそうした姜尚中自身の姿勢が貫かれていると言っても良い。
 政治思想を学んだヒトにとっては「そもそも論」から始まっていると言っても過言ではないためそれほど新鮮味を感じないが(←政治思想を専攻している管理人もそっちの側)、不特定多数の読者は政治思想をかじったことすらないだろうから、「そもそも論」というのは自分の頭で判断をするきっかけとするには非常に重要だろう。
 なお、章末ごとに「古典」とすべき本を紹介し、姜尚中自身による簡単な解説がある。ただ、この本だけ読んで『アメリカにおけるデモクラシー』(トクヴィル)とか『職業としての政治』(ヴェーバー)とか『超国家主義の論理と心理』(丸山眞男)などを読もうと思っても、ちょっと難しすぎるのではないかい?と自身の経験に照らし合わせて思った次第。
 テッサ・モーリス・スズキの『過去は死なない』はその中でも読みやすいと思われるけれど…。
 文章は分かりやすい口語体で書かれているため、政治学や政治思想について、文字どおりの「初心者」がチャレンジすると良いだろう。

オススメ度→★★★☆☆