いよいよ本命の登場@安倍晋三の総裁選挙立候補と立花隆と。
今日、本命と呼ばれる安倍晋三が自民党総裁選に立候補を表明した。ようやく、というか満を持してというのが管理人の印象。これと関連して月刊現代に興味深い記事を発見した。
それは立花隆の文章で「憂国の緊急寄稿・立花隆−安倍晋三への宣戦布告」と題されたモノだ。まぁ、詳しいことは雑誌を買って下さい。ということなのだけれど、大雑把に言えば、立花が問題にしているのは戦後日本の路線というのは南原繁の説いたような国家への道であり、それは戦争への痛切なる反省から日本独自の文化や伝統を強調することではなく、普遍の文明に依拠し、その中で文化国家を実現させるというものであった。
その上で立花は安倍晋三が『美しき日本』などでイメージする日本像というのは、かつて南原たちが退けたニッポン固有の文化・伝統を強調するものであり、それは実のところ強い国家を作り上げることが出来ない、と論じている。
文明の持つ普遍性と文化の持つ固有性というのは西川長夫が詳細に論じた名著があるので興味があればそちらを参照にされると良いのだが、(テーマは異なるのだが、仲正昌樹も似たような論じ方をしたモノがある)とかくこのご時世に南原繁を持ち出すというのがインパクトは欠けるものの、非常に面白いなと思った。
戦後、東大の総長を務めた南原繁は戦後日本の採るべき道を説いて時の首相、吉田茂と応酬をしたこともあるが、管理人自身は南原は「戦後知識人」のカテゴリーには属し得ず、「戦前のリベラリスト」と形容するにふさわしいと思う。
南原についてはもっと南原自身のものを読み込みながらまた時を改めて。
立花も指摘していたことだが、安倍にとっては日本国憲法や教育基本法に代表される「戦後民主主義体制」は「改められるもの」と捉えられ、否定的な文脈で表現されることが多い。つまり、それらは「日本を愛する」ことを阻害する要因であるかのようなとらえ方だ。
小熊英二の『民主と愛国』やジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』に描かれている終戦後の風景を見れば、日本国憲法に代表される戦後民主主義が果たして最初から愛国的要素を排除したものであったか、といえば、そんなことは全くない。(このあたり南原と近いのだが)、そうした戦後民主主義体制こそを愛国の中心に据える、いわば「新星日本へのパトリオティズム」とでも呼ぶべきものが存在した。(これが安保闘争やベトナム反戦運動などを経て憲法パトリオティズムへと変容する?)
どうも、諸悪の根源を憲法と戦後民主主義に求め、それさえ改めれば問題は解決するのだ、的な「リセット願望」があるように思えてならない。だが、実際はゲームのようにリセットが上手くいくはずも無いのだが…。
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