東京文化会館レクチャーコンサート2006-2007「音楽に秘めた愛」シリーズ
第2回 「シューマンとブラームス」
2006年10月14日(土) 14:00開演 東京文化会館小ホール
ナビゲーター&ピアノ:イェルク・デームス
R.シューマン:色とりどりの小品 op.99から
ブラームス:シューマンの主題による変奏曲 op.9
クララ・ヴィーク:4つの性格的小品 op.5から ロマンス ロ短調
R.シューマン:幻想曲 op.17から 第1楽章
ブラームス:幻想曲集 op.116から 第3、4、7曲
R.シューマン:クライスレリアーナ op.16
アンコール
シューマン:歌曲「リーダークライス」より「月の夜」op.39-5
「子どもの情景」より「トロイメライ」op.15-7
ピアニストの外山啓介リサイタルのコトでコメントつけてくれた方々がいて有り難いのですが、ブッキングしたため管理人は今回、デームスのレクチャーコンサートに行ってきました。外山さんはまた聴く機会があるでしょう♪何と言っても、これからの人ですからね。デームスは今回を逃すと、ひょっとして…というのがあったので、一生後悔しない方を。(ラローチャ最後の来日公演も素晴らしかった。)
シューマンはドイツロマン派の作曲家。歌曲やピアノ曲にその才能を発揮しました。一般的にオーケストラ曲は苦手、と見なされてるようです。管理人はシューマンの交響曲や協奏曲好きなんですけど…。例えば、ベルリオーズのように華やかなオーケストレーションは持ってない。けれど、作曲家・池辺晋一郎のいうとおり、あーいう「味わい」なんだと思いますよ。
早速内容。
前半は専らレクチャー。通訳は、デームスのお弟子さんとして20年以上そばにいる平賀寿子さん。オーストリア出身だからドイツ語だと思って期待したら、当てが外れ、終始フランス語でした。平賀さんのサポートがよく、レクチャーは非常にスムーズ。
レクチャーの中身は、曲のアナリーゼ(楽曲分析)よりもシューマンの妻・クララ、それにブラームスの接点に注目しながら、シューマンをドイツロマン派の大きな流れに位置づけて、その作品を解釈していこうというモノ。
だから音大生らしい人たちが散見されたけれど、このレクチャー自体はあまり役に立たなかったのではないだろうか?管理人なんかは政治思想史を研究しているから、そーいったアプローチは自分の研究に近いなぁ…と感心しながら聞いていました。
シューマンとブラームスは大体20歳違い(シューマンの方が先に生まれてます)。で、妻・クララは長命を得たので、ブラームスと同じ頃他界してます。シューマンのことを尊敬していたブラームスは、同時にクララに対しても親しみというか、憧れを持っていた様子で、シューマン没後はブラームスがクララの面倒を見たりするわけです。
だから、「音楽に秘めた愛」なんですね。
後半は、ほぼコンサート。デームス自身がロマン派に属する(最後の世代の)ピアニストなので、非常に叙情溢れる演奏をしていました。特にクライスレリアーナはテンポに緩急をつけたり、ルバートをかけたりと、あーいった演奏の仕方をする人は(過去の巨匠と呼ばれた)CDでしか聴けないモノだと思ってました。
もちろん、もう80歳近いために、ミスタッチや打鍵そのものが鈍くなってきているところもありました(急にテンポを上げるところとか)。でも、今回実演を聴いて、始めて「シューマンはこのように弾かれることを望んでいたのではないか!?」と慧眼させられるような思いでしたね。
それにスケールが大きい。和声をしっかりと響かせるので、中低音の伸びから響きが分厚くなり、本当に濃厚なシューマンを堪能。
あと、アンコールのトロイメライ。この曲はシューマンのピアノ曲でも屈指の有名曲。ドラマやCMで使われるから、タイトルは知らなくても誰でも知ってる曲です。曲自体は簡単らしいのですが、それを「ちゃんと弾く」ことの何と難しいことか。
しかし、デームスは違ってました。ピアノを弾き始めた3小節くらいで、一気に管理人は引き込まれてしまいました。「夕映えするように美しい」とはこのことを指すのでしょう。終始70~80%くらいの力で抑制し、その余力が大きいために、一層、曲に隠された叙情性が際だちます。
いままでそんなにイイ曲だと思っていなかっただけに、今回のコンサートは大きな収穫でした。