あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

要するに登山の描写なのだ@都響定期演奏会感想

東京都交響楽団 第634回定期演奏会 Aシリーズ


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58
リヒャルト・シュトラウス:「アルプス交響曲」 作品64


指揮:エリアフ・インバル
ピアノ:エリソ・ヴィルサラーゼ


 のだめカンタービレでマンガドラマ共々世話になってる、都響。また、どっちがお世話になっているのかという問題はあるのだけれどね。
 今回はベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番とR・シュトラウスアルプス交響曲という組み合わせ。きっと、クラシック聴かないヒトはサッパリだと思いますが、これはどちらも「名曲」にあたります。ただし、「有名曲」では無いから、メロディを聴いたことがあるというわけにはいかないと思うんですけどね。


 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は彼が30代半ばの頃の作品で、この時期は交響曲第3番「英雄」やピアノソナタ「ヴァルトシュタイン」とか「熱情」なんかが作曲されています。それまでの古典派の様式から大きく飛躍すると言っても良いのだろうと思いますね。
 ベートーヴェンのピアノ協奏曲では第5番「皇帝」が非常に有名ですが、作曲家の武満徹は第4番の方を好んだらしいですし…。一般の人がイメージするベートーヴェン「らしさ」(多分、「運命」のイメージ)からするとこの4番は大きく異なります。柔らかな日差しが差し込んだ森の中を思索しながら歩くような、そんな穏やかな出だしの曲です。
 そんなんで、興味があったら4番、5番で聴き比べも面白いかもしれませんね。


 ピアノを弾くヴィルサラーゼはロシア(正確にはグルジア)のピアニスト。かの大ピアニスト、リヒテルの弟子筋にあたるらしいです。日本でもピアノコンクールの審査員などを務めるなど活躍しています。とはいえ、管理人も初めて聴いたんですが。
 ヴィルサラーゼのピアノは確かに「ロシア・ピアニズム」のピアノです。存分にならすピアノはとてもスケール感があって、ピアノという楽器の特性を良く活かしています。それと、非常に繊細に(ピアノの)ペダルを踏むので、ニュアンス豊かな演奏をしていました。とはいえ、4番にしては特に第1楽章はちょっと華やか過ぎかな、と言うきらいはありましたが…。第3楽章はそれが全てプラスに作用している名演でした。


 ヴィルサラーゼが割と「知る人ぞ知る」というピアニストだったせいか、前半のプログラムが終わったら堂々と帰る宣言をしているヒトもいました。その帰る宣言をしていたオバサンは最前列に座っていて、終演後のピアニストに花束を渡していたから、ハッキリと目当てがあったんでしょうが…。
 ぶっちゃけ、それって、どーよ?って思うんですけどね。
 レストランでコース料理を食べるとしたら、魚のメインディッシュまでしか食べてないという感じでしょ?なんか、チケットを買っている客なんだから、前半で帰ろうがどうしようと自分の勝手だ、なんて思うのかもしれませんが、やっぱり後半もきちんと聴くのがマナーなんじゃないのかなぁ…。
 ピアニストの側からしても、自分からピアノしか聴かないようなヒトにファンです!みたいに言われても困るんじゃないかな。聴くのはピアノ曲だけです、みたいなのが一番始末が悪い。好き嫌いはあってもいいけど、最初から「聴く聴かない」になってしまうと、食わず嫌いじゃないですが、その先に広がる豊かな世界を体験できずに終わってしまうし、結局そういった姿勢は、後々フィードバックするんだと思うんですよね。
 ま、脱線でしたが…。


 後半のアルプス交響曲
 この曲は、非常に編成がでかい曲で、通常2~4人しか動員しないホルンを14人も動員するし、舞台にはハープやらオルガンやら…と普段はあまり出てこない楽器がいろいろ並んで、風の音を作る楽器なんかも置かれる見た目も派手な曲です。だから、「あれは映画音楽だ」なんて言われてしまったりもしたのですが…。
 というのも、作曲者のR・シュトラウスが第二次大戦後まで生きていたヒトなので、音楽史的にみれば編成はでかくなって行き着いた最終形態みたいなところまで行ってしまったわけです。
 そんなでかい編成の曲なので、フツーの演奏会では取り上げることはありません。人員の確保も大変だしね。なので大体、そのオーケストラの祝祭的なイベントの時に取り上げています。例えば、大阪フィルでも創立50周年記念でこの曲を取り上げていたようですし、今回の都響も創立40周年記念シーズンの一環で取り上げているようです。
 曲はタイトルにもありましたが、非常に描写的な音楽。
 アルプスに朝日が昇る→山道を歩き出す→牧場を通り過ぎる(ここではカウベルを使う!)→山頂に着く→嵐に遭う(ここで風の音を作る楽器を使う!)→日没する
 という、アルプスに登る一日を描写しています。
 なので、フィナーレに向けて盛り上がる、と言うわけではなく、この曲の一番の聴き所は「山頂にて」と呼ばれる曲の真ん中にある部分です。ここの迫力、スケールの大きさは生で聴かないと分からないです。管理人はこの「山頂にて」の部分で、あまりの素晴らしさに涙が出てしまいました(苦笑)。
 その代わり、フィナーレにあたる、日没のところは本当に美しい音楽です。(っていうかR・シュトラウスの曲はそんなんばっかし)
 70歳を過ぎたインバルのいよいよ円熟を増すタクトのもと、非常に良く演奏していました。ともかく、今回はこの曲を生で聴けて良かった♪


 終演後、外で、京大オケのビラを貰う。
 来年1月20日サントリーホールまで遠征するらしい。その心意気と、都響アルペンの後にビラを配る意気込みに管理人はビラを貰いました。↓で詳細が分かります。
http://www.geocities.jp/kyodaioke/index.html


ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 「皇帝」

ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 「皇帝」

これの極めつけは多分、アラウで良いんじゃないかなぁ…。しかもこれなら4番&5番のセットだし。

"ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第3番,第4番"

4番の叙情性を表現しているモノとして内田光子盤。内田の力と、巨匠・ザンデルリンクの指揮が放つ味わい深い演奏。多分、アラウ共々名盤なので図書館とか探せばあるかも。


R.シュトラウス:アルプス交響曲

R.シュトラウス:アルプス交響曲

今日やった、インバルのアルプス交響曲小澤&ウィーン・フィルの演奏。ウィーン・フィルの力もあって、ストレートに曲の良さが伝わる名演。管理人にしては珍しく小澤の演奏を推すと言う(笑い)。個人的に好きなのはやっぱり朝比奈隆の演奏。とはいえ、北ドイツ放送交響楽団との演奏がイイです。朝比奈の演奏では「山頂にて」のスケールが非常に雄大で、本当に聴いていて涙してしまいそう。