あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

スターリン体制下での苦闘と抵抗@東京都交響楽団 第637回定期演奏会 Bシリーズ

会場:サントリーホール

指揮:ジェイムズ・デプリースト


シュニトケハイドンモーツァルト
(2台のヴァイオリンと2つの小オーケストラのための)
ヴァイオリン:矢部達哉
ヴァイオリン:双紙正哉


ショスタコーヴィチ交響曲第8番 ハ短調 作品65


 前にも書いたかもしれませんが、ソ連(大体、今でいえばロシア)の作曲家・ショスタコーヴィチの生誕100周年が2006年でした。今年のコンサートでいくつものショスタコーヴィチの作品を聴くに及んで、管理人個人としてはモーツァルトよりも余程認識を改めた作曲家、だといえます。


 シュトニケは管理人初めて聴く曲。

 開演ベルが鳴る前に、指揮者のデプリーストさんがすでに舞台中央で待機。
続けてチェロとコンバスが登場。

 そーすると、舞台はやおら暗くなり、真っ暗になった舞台でチェロとコンバス(=コントラバス)が演奏する中で、ヴァイオリンとヴィオラが登場。といっても、全員でも10人ちょっとしかいませんが…。
 ただ、このチェロとコンバスが指定されたとおりに不協和音を奏でる(苦笑)。やっぱりシュトニケは20世紀の音楽家だなぁ…と最初に思わせる展開。
 チェロとコンバス以外は奏者は全員たったままヴァイオリンやヴィオラを弾いてます。

 ヴァイオリンの矢部さんと双紙さんによる掛け合いもありつつ、今ひとつ良く分からないまま終了。
 ただ、この曲の終わり方が変わっていて、たって演奏するヴァイオリンやヴィオラの人たちは徐々に暗くなる(フェード・アウトする)舞台から袖へとゆっくり帰って行きます。
 そして、真っ暗になって音楽は終了。ね、変わってるでしょ?

 ちなみに、ここで、音楽が終わってないのに拍手をするヒトが登場。慌てて他の客に制止される。定期演奏会って客席マナーのある人が多いハズなんだけど、格好が悪い。


 ショスタコーヴィチがこの第8番を作曲したのが1943年。状況としては独ソ戦(1941〜1945年にかけてナチス・ドイツソ連との間での戦争)もソ連優勢が確実視され、戦意は高揚している最中であり、スターリン体制下がどんどん強くなっていく過程でもあります。
 ソ連史研究は渓内謙の著書を参照にすればいいとして、ともかく、そーした「戦争には勝ちそうだけれど、スターリン体制下への絶望(苦痛とでも言った方が適当?)」みたいな雰囲気がこの曲からは感じられる、ということです。


 そーいった経緯もあり、内面的に複雑なこの曲は大曲ながら演奏機会の少ない曲です。だから、今回、わざわざチケット買ってサントリーホールまで行ったんだけど…。
 

 第1楽章は充実。無機的なところがなく、この曲に暗示される精神性をえぐり出します。当時のソ連社会の緊迫感が伝わってくる、とでも言えばいいのでしょうか。ただうるいだけの強奏というのは無くて、とても有機的に響きます。コーラングレイングリッシュホルン)のソロが秀逸。

 第2楽章はピッコロのソロが素晴らしい。っていうか、この曲ソロ奏者にストレスを与える曲だな(笑)。なんて思った。結構、ソロの時に奏者には曲芸的なパッセージを吹かせている。そんなに難しくはないのかもしれないが、ソロだと言うこともあってプレッシャーがかかるのは必須だと思う。

 冒頭のヴィオラの合奏が印象的。相対的にこの曲は木管金管が活躍していて弦の美しさを感じさせるところは少ないのですが、ヴィオラ→ヴァイオリンと繋いでいくところはやはり都響。その後のファゴットもまた見事。


 ただ、その後の展開はちょっと散漫になった気がしたけれど…。くどいようだけれど、この曲、盛り上がりを見せるのだけれど、それはとても皮相な盛り上がりだったり、ともかく「素直に喜べない」っていう屈折した音楽なので、そんなに聴いて感動するというものでもないと思う。
 つまり、外面的な感動が味わえないと言えばいいのかな。もっとも、評判の高いムラヴィンスキーのこの曲の演奏も、管理人の中では今ひとつなので、曲がダメなのか、いまだに良い演奏に出会えてないのか、どっちかだろうと。


 そんなことを言っても、木管金管の活躍が非常に重要なこの曲を、管理人は2階席中央前列という、サントリーホールでは一番音の良いところ(実体験として、いろんな席で聴いたけど2階席中央前列が一番の「音」はイイ)で聴いていたので、今回、オケの技量に関して言えば非常に満足。
 もっとも、サントリーホールは場所によって金管の響きに結構ムラがあるので、一階席で聴くと多分、ガッカリするかも。ちょうど、管理人の座っていたあたりで丁度良く混ざっていた、って感じだった。


 とにもかくにも、この曲を生で聴けたのは良かった。
 全開のヘンデルメサイアと聴き比べてどっちがイイかと言えば。管理人としてはメサイアを評価したいですね。


 次回は、ついにデプリースト×都響による年末恒例、ベートーヴェンの第九。
 どーなりますやら…。

ソヴィエト政治史―権力と農民

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ソ連史の大家、渓内謙の研究業績から。もっと簡単に『世界の歴史』シリーズを読むという手もあるとは思うのですが…。
ショスタコーヴィチ : 交響曲 第8番ハ短調作品65

ショスタコーヴィチ : 交響曲 第8番ハ短調作品65

あまりピンとこない中で第8番といえば、やっぱりこれかなぁ…。緊張感に満ちた演奏であることには間違いない。
もうちょっと、いろいろ聴いてみよう…。