あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

無党派が生んだ?宮崎県知事

 そのまんま東東国原英夫)が宮崎県知事に当選したことが、月曜の全国紙などでは大きく報じられた。もともと宮崎といえば保守が強い地域である。例えば、道路族議員抵抗勢力の代表のようなイメージのある江藤隆美などはこの宮崎出身であった。

 ま、江藤を宮崎を代表する政治家とすると、宮崎県の人に怒られてしまうかもしれませんね…。


 さて、今回の選挙でカギを握ったのは「無党派層」だと言われている。
 昔は無党派層というのは「政治的には無関心」である、というのが通説だったのだが、ここ20年くらいの間にその認識は大きく変わったといえる。


 無党派層は大きく分けて3パターン。

  1. 政治的無関心層…政治に興味のない人々。「自分たちの将来よりも、今日の晩ご飯のメニューが大事だよ」というようなヒト。伝統的にこーいうヒトはいつの時代も世の中に存在する、というのが政治学では考えられている。
  2. 政党拒否層…政治への関心が高いモノの価値観が多様化してしまったので従来の政党では要求が満たされなくなってしまったヒト。イングルハートの「脱物質主義的価値観」などはこれと関係する。例えば、経済政策は自民党の政策支持だけど外交問題民主党の政策支持で、社会保障共産党の政策支持、といった具合。その人個人の政治的要求を包括的に吸収できなくなってしまうとこのような人たちが増える。ドイツで緑の党が躍進するのもこうした背景がある。
  3. 脱政党層…旧社会党を支持していて、現在、受け皿が無い状態のヒト。社会党自民党と連立内閣を組むあたりで、社会党への支持を止めてしまったヒトが典型。この層も政治への関心は高いし、かつ旧社会党の支持者だったヒトが多いとされるので、投票の際は基本的に自民党以外を選択することが多い。

 アメリカでも無党派層は多いとされるのだが、日本に特徴的なのは③の人たちが多いと言うことだ。(アメリカは①か②に大別される)

 そんなわけで

 今回の県知事選挙は保守陣営候補者が二人も出るなど、分裂したこともあり、そのまんま東はまさにそうした「保守分裂の間隙を縫って」当選したとも言える。
 ただし、談合事件で逮捕された前知事、ならびに前知事を支援した政党への嫌悪感から有権者そのまんま東を選んだと言えなくもない。そのへんは詳細なデータ分析が必要だろう。

 問題は田中康夫と同じくそのまんま東には政治の経験が全くないと言うことである。横山ノックにしても青島幸男にしても長い間参議院議員としてのキャリアが一定の「信用」となったことは否定できない。
 さらに田中康夫と同じく議会はオール野党である。田中康夫の場合、共産党が親・田中だったし、しなやか会(田中康夫を支える県議員団)がいたものの、県議会では圧倒的少数だった。県議会が圧倒的に野党多数だった場合、副知事人事から躓く可能性が高く、宮崎県政が停滞しかねない。

 というわけで、管理人は、そのまんま東こと東国原知事の前途は非常に多難であると予測する。独自色や改革を推進しなければ支持してくれた県民の期待を裏切ることになるので、独自性を打ち出したいだろうが、そうなると県議会との対立は激化するだろう。
 反対に、県議会と円滑な関係を結ぼうとした場合、世論的には「議会に取り込まれた」と映るから、不支持が広がることになる。

 こうした場合、採りうる選択肢としては、テレビなどのマスメディアを通じて世論の高い支持を集めて、人気を背景に改革を推進するという手段があるが、これはまさにポピュリズムであろう。この手法、まさに改革勢力VS抵抗勢力で世論の支持を集めた小泉内閣と変わらない。

 それを考えると、案外、そのまんま東が手本とするモノは近くにあるかもしれない。


追記
 社会思想学者の作田啓一さんがこの件で別の角度からコメントしている。
 作田さん、今年で85歳になると思うのだけど、相変わらず切れ味鋭い。元気だなぁ…。
【激高老人のぶろぐ:そのまんま東氏が再チャレンジに成功だと?】
http://gekko.air-nifty.com/bc/2007/01/post_d1e8.html