あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

矛盾と対立の緊張関係@施政方針演説雑感

 先週、国会が開会した。


 以前にも解説したけれど、1月から始まるこの国会は「通常国会」と呼ばれ、国会法により会期は150日と決められている。(もちろん延長あり)
 3月までは主に予算を、4月からは(主に政府から提出される)法案の審議・採決を行う。

 通常国会の始めには、総理大臣が内閣の基本方針を説明する「施政方針演説」を行う。
 国民に対して「この目標に従って政治を行っていきますよ」というアピールでもあるのだ。

毎日新聞 施政方針演説:保守色強めた首相】
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/photojournal/news/20070127k0000m010077000c.html

 もっとも、施政方針演説の内容をどのくらい官僚の力を借りずに練り上げたか、という疑問は残る。総花的内容であることから考えると、基本的な枠組みを作らせて、安倍総理がこだわりをみせる部分だけを追加したんじゃないか、という気もする。


 ただ、美しい国づくりを謳うわりには、相変わらず無意味にカタカナ語が多いなぁ。まぁ、そんな批判はどーでも良いのだろうけれど。
 内容については上記サイトなんかを参考にしてもらうとして、以下、管理人の個人的考察。


 例えば、アジアにおけるヒト・モノの交流の中心となることを目標としたり、女性の積極的社会参加を求めたり、地方都市の活性化を行おうとする姿勢は評価できる。
 しかし、安倍内閣のスタンスを考えた場合に、これらの目標はハッキリ言えば正反対じゃないのかな、という気がする。

 アジアに向かって開かれた国を目指す、という方向性と近年の対中国・韓国・北朝鮮関係は正直な話、整合していない。過度にアメリカと協調する今の外交方針とアジアゲートウェイ構想の実現過程での方向性の違いがある。
 また、女性に社会参加(これも労働市場への参加なのだろうが…)を求めるわりには、パートと正社員との賃金格差は大きいし、今なお、「仕事か家庭か」みたいな二者択一が迫られる社会風潮である。(フルタイムとパートタイムでは拘束時間が開きすぎ、とか)
 託児所や保育施設も不足していて、育児と仕事の両立が出来ない環境的要因も改善されない。おまけに、安倍内閣の側近と呼ばれる人たちの中には夫婦別姓には反対など、ライフスタイルの多様化を認めない、伝統的な家族観を維持している。
(側近の山谷えり子高市早苗は結婚しているが旧姓を使用している。これは矛盾ではないのだろうか?)
 
 規制緩和、自由競争などの新自由主義的な経済政策である限り、当然のことながら、中央と地方の格差を増大させるコトはあっても、それによって地方が繁栄するということは難しい。(これは善し悪しの問題ではなく、経済学上、事実としてそうなってしまうだろう、と言うこと。)


 つまり、小泉内閣の継承によって成立した安倍内閣であるのだが、小泉路線安倍内閣が目指す「美しい国」というあり方はそもそも向かっていくベクトルが違うと言えば分かりやすい。
 だから、小泉路線を継承・発展させようとすると、美しい国のあり方とはどんどんかけ離れていくし、美しい国を目指そうとすれば、小泉路線からの軌道修正どころでは済まない、ハッキリとした「方針転換」が必要になる。

 一番気になったのは、教育再生と、「戦後レジームの原点に遡る」という表現だったのだけれど、これはそのうち稿を改めて。


 余談になるが、演説中に出てきた「カントリー・アイデンティティ」なる英語は存在しないし、和製英語でもない。極端にいってしまえば「安倍首相による造語」である。造語である、ということを前提にした上で、その意味するところを子細に検討しようとすると、やっぱりそこでも困難な問題が存在する。

以前、エントリでも書いたけど、
愛国心教育の難しさ〜国とはなんだろうか?】
http://d.hatena.ne.jp/takashi1982/20061115/1163608842

 安倍首相が唱える「カントリー・アイデンティティ」は決して「ニッポンの理念」や「目指すべき方向」について明確な答えを出してくれるモノでは無い。それは一元的に明確になるモノではないからだ。
 にもかかわらず、カントリー・アイデンティティが我々の進むべき方向を示してくれる道標となるとするならば、それは存在しないカントリー(故郷)を政府によって作り上げる壮大なプロジェクトにならなくてはいけないはずだ。


 もちろん、そんな取り組みはして頂かなくて結構である。