あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

環境経済学と現代社会の状況分析。

 長らく京大の教授(といっても経済研究所所長)を努め、退官後の現在は立命館大で教鞭を執る佐和は環境経済学の分野や、あるいはギデンズ『第三の道』やガルブレイス『悪意なき欺瞞』などの翻訳でその名を知っている方も多いだろう。(元々の専攻は計量経済学
 経済学者とはいってもその幅は非常に広い。とはいえ佐和の方向性は環境経済学第三の道などからある程度窺い知れるように、市場万能・自由放任といった新古典派の路線を採らない。

 内容としては、佐和自身の興味対象からだろうが、環境経済についてがメインとしながら、ギデンズやガルブレイスらの議論から影響を受けて、近代以降の経済社会のあり方を論じ、持続可能な経済成長(だから環境経済なんだけど) についての論を進めている。

 正直なところ、ギデンズを読んでいればほとんどのところ目新しさは感じない。それは佐和自身がイギリス労働党の提唱する「第三の道」(とその理論的支柱であるギデンズの議論)に共鳴しているからだと思われる。
 しかし、そのギデンズの著書が必ずしも一般的に読んで分かりやすいものではなく、その著書『第三の道』にしても、非常に総花的で、予備知識なしに読めば「何が言いたいのだか良く分からない」となってしまうから、やはり本書の持つ意味は大きいのかもしれない。それはギデンズ独特の社会分析概念を佐和がきちんと解釈してみせているからであって、その解釈は妥当であるといえる。
 (とはいえ、そのことばの使用法は一般的には理解しにくいかもしれない)

 ただし、ところどころ、自身の身の回りに起こったことから一般論を展開してしまっている箇所があり、内容自体は賛同できるものの、その手法にはいささか疑問がある。


 そうは言ったものの、新書レベルでは比較的良くまとまっており、文章も読みやすいことから、専門を異にする人やこれから環境経済学第三の道について勉強しようとする「入門」にはなかなか適当な本だとも言えるだろう。