あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

徴兵制と倫理規範の関係性

そのまんま、じゃなかった東国張宮崎県知事が「徴兵制があった方が良い」発言をした一件についての雑感。

[宮崎知事、徴兵発言で釈明 今度は「徴農制」必要] / 宮崎 / 西日本新聞 http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/miyazaki/20071129/20071129_004.shtml
[東国原知事の釈明要旨 「徴兵制」発言で] / 宮崎 / 西日本新聞
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/miyazaki/20071129/20071129_003.shtml

 特に論理を詰めるエントリにするつもりもないので(だから雑感扱いだし)、そこまでする必要もないんだけれど、こーいうときに必ず「ちゃんと裏とってるのか?」的な疑問を持つ人がいるようなので、一応、その後の展開をトレースしてみた。

 九州地区でトップシェアの西日本新聞だから、まー一番詳しいでしょう?くらいの安易な発想なんですけどね。


 新聞記事から見れば分かるけど、東国張のねらいは「道徳規範の復活に徴兵ないしは徴農が効果があるのではないか」というものなのだろう。
 強制的に規律を守らせるような組織に(だから自衛隊なんだろうけど)入ることで、そーいった規律を守る大人が量産されていくというわけだ。
 なんで農業することで規律を守るのかは分からないけど。農業は「仲間内」での決まりを大切にするけれど、社会的倫理規範の確立にどれだけ寄与するというのかが全然分からない。日本政治史を見れば分かりそうなものなんだけど。


 その上で、ホントに徴兵ないし徴農が社会規範の確立に効果があるのか?ってコトなのではないか。この点について管理人は全く効果はないと考えている。
 では、徴兵制が存在する国はどこでも「道徳的に立派」である、といえるのか。そんな評判は聞いたことないし、相関関係があるという研究を目にしたこともない。

 価値観が多様化している先進国ではどこでも倫理規範の混乱が起こっている。(それはマズロー欲求段階説にも対応する)
 だとすれば、それは価値観の多様化に対する社会の寛容・不寛容の問題や、「どこまで自由が許される」という基準に対する合意形成の努力という観点から考えられる問題だろうと思う。

 大体、徴兵があって、農業就業者数が多かったという観点から考えると戦前の日本というのはさぞ立派な国になっていないといけないハズだが実際は全くそんなことはない。

 『戦前の少年犯罪』に丹念に調べられているし、犯罪白書などをみても分かる。軍事物資を持ち逃げして、戦後の闇市で一財産築いたような輩はたくさんいるが、それは軍人である。
 そうした軍人たちの横暴さなどは従軍体験をした作家たちによって描かれているのは周知だし、また、そうした軍隊内の精神構造を「抑圧の委譲」といった表現をした学者もいる。


 ちなみにヨーロッパの左翼はみんな徴兵制を支持していると言うが、そこは保留をした方が良いと思う。
 共和主義的政治観からすれば、天与のものとして存在する個人の自由はそのままでは行使できず、自由を保護する国家のうちで初めて行使できる。だから国防の義務というのはむしろ当然の義務(むしろ自由を守るための権利)なのである。
 だからといって、徴兵制を支持するヨーロッパの左翼が好戦的かと言えば、それは違っている。たとえばオーストリア社民党は国是たる中立を支持し続ける政党だ。左翼政党にはインターナショナルの概念があるので、ナショナリティを前面に出す戦争には否定的なのが常である。


 だからなんなんだ、と言われそうだけど、教育問題と同じく社会や経済システムの変容が絡んでる問題には、そこへの眼差しを欠いては有効でないだろう。

戦前の少年犯罪

戦前の少年犯罪

Liberty before Liberalism

Liberty before Liberalism