聴く方もくたびれる@都響 第656回定期演奏会
2008/1/18
東京都交響楽団第656回定期演奏会 Aシリーズ@東京文化会館
武満徹:弦楽のためのレクイエム
武満徹:アステリズム*
武満徹:系図―若い人のための音楽詩**
ベリオ:シンフォニア***
指揮:沼尻竜典
ピアノ*:小川典子
アコーディオン**:御喜美江
語り**:水谷妃里
声楽アンサンブル***:二期会マイスタージンガー
毎年恒例、1月の現代音楽の夕べである。
こーいうプログラムを組めるあたりが東京「都」交響楽団だと思う。
普段じゃ絶対聴けない作品が聴けるのは貴重かつ音楽の幅が広がって「良い」。
いきなりこんな書き方をしたのも、関東のオーケストラの中で非常にプログラミングがよく練られているなぁ…と感心するのは新日本フィルで、採算に合わないけど大事なことやっているなぁ…と思うのが都響。都知事も評価してやればいいのに。価値のわからんヤツだ。
毎年2回は邦人作曲家の現代音楽を都響はやっているが、特に別宮貞雄がプロデュースを開始してから非常にプログラミングが良いと思う。
出来れば都響のプログラミングに作曲家や批評家がアドヴァイザーになってくれればいいんだけどね。
武満は日本人作曲家としては世界レベルで認められてる数少ない作曲家。
個人的には欧米の人がイメージする「ニッポン」を上手く西洋音楽の形式で表現できた作曲家だと思う。
だから彼らの耳にとっては非常に斬新な響きだし、書こうと思っても書けない類の音楽である。音楽観のそもそもの違いとでも言えばいいのか。
弦楽のためのレクイエムはこの曲の持つ硬質さ(ストラヴィンスキーは「インテンス」と言ったらしいけど)があった演奏だと思う。もっとも、テンポの取り方とかは好みが分かれるかも知れない。
アステリズム以下は初めて聴く曲。
この曲のためだけに小川典子が来るあたりが豪華な使い方をしているなぁ…とおもったりもした。もっとも、この曲はピアノ協奏曲風な配置を見せながらも、実際のところ「そうでもない」印象だ。
協奏曲でもないし、かといってオケの一部としてもカウントできない何とも中途半端なところが武満の狙いなのかも知れない。
この曲は非常に息の長いクレッシェンドが見せ場らしいのだが、この日も2分近くあったのだろうか。まぁ、実際計ってないから何とも言えないのだが、実感としては90秒以上はあったように思える。
谷川俊太郎の詩と音楽が付く「音楽詩」という形の「系図」。水谷妃里はフジのドラマ「あしたの喜多義男」にも出ているらしい。見てないから分からないが。
武満の指示によると、この朗読者は15歳くらいの女の子が読むのだという。
とかく調性からは遠いイメージの武満の音楽だが、後期になると随分丸い響きの音楽が増える。確かに武満のCDは家にも結構あるが、後期の作品は独特の音への感覚を持ちながらもそこには確かに調性が感じられる。
系図は英訳すると「Family tree」であって、要するに「家系図」である。この谷川俊太郎の詩は「おじいちゃん」「おばあちゃん」「おとうさん」「おかあさん」などが出てくるが、そこに描かれる家族は非常に抽象化された家族である。
しかしながらその詩と共に演奏される音楽はどこか儚げである。おそらくここで登場する家族が追憶の中の、そしてどこかに存在するようでどこにも存在しないような、夢の中での話のようなものなのだろう。
後半のベリオも初である。
というか、今回は恐らく高齢であるからだろう、別宮貞雄の解説に代わって、指揮者の沼尻のインタビューだったが、果たして今回の武満とベリオのつながりというのはどのようなものなのだろうか。全然接点がないように思えるのだけれど、別宮は企画段階でこの作曲家同士に何らかの内的関連性があったから今日のプログラムになったわけで、そのあたり一体どうなんだろうと思った。
使い古されていてリアリティがないかも知れないが、ベリオはまさに文字通りの「前衛音楽」という表現がぴったりだ。
曲はマーラーの復活をモチーフにしながら様々な過去の有名な曲が引用され散りばめられている。バッハ、ベートーヴェンからベルリオーズ、ラヴェル、R.シュトラウス、ストラヴィンスキーにシュトックハウゼン…その錯綜とした世界と、同時に敢えて聞き取れない「会話」がマイクを通じて繰り広げられる。(多分はじめの頃は仏語で次第に英語?)
特に第三部のあたりなんかあまりに刺激的で、初演はさぞスキャンダラスな展開になったのではないかと思わせられるのだが…。
特にこのベリオを集中しながら聴くのはくたびれる。
僕の関の後ろに座っていたマダムは武満で帰って行った。まぁ、あの年齢には確かに刺激が強すぎたかも…。
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ブーレーズ盤があるけど、そっちは未聴。