あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

芝健介『ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』(中公新書)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

HPより
ヒトラー政権下、ナチ・ドイツによって組織的に行われたユダヤ人大量殺戮=ホロコースト。「劣等民族」と規定されたユダヤ人は、第二次世界大戦中に六〇〇万人が虐殺される。だが、ヒトラーもナチ党幹部も、当初から大量殺戮を考えていたわけではなかった。本書は、ナチスユダヤ人政策が、戦争の進展によって「追放」からアウシュヴィッツ絶滅収容所に代表される巨大な「殺人工場」に行き着く過程と、その惨劇の実態を描く。

 個人的に、一般常識として知っておいて欲しいWordsの一つがホロコーストだと思う。

 ホロコースト百科事典によれば、次のような説明があるという。

ギリシャ語にその語源を持ち、「全焼のいけにえ」を意味していましたが、時代と共に、大規模な破壊、殺人をあらわすことばとして用いられました。第2次世界大戦後、ナチス・ドイツによるユダヤ人や他民族への破壊、大量殺人を意味することばとして用いられ、今日では、主にユダヤ人(600万人)への大量虐殺を表現することばとして、一般化しています。

 『アンネの日記』やシンドラーのリストとか、戦場のピアニストなんかはまさにホロコーストを描いたモノだ(アンネの日記は実話だけど)。ゲットーだとかアウシュビッツなんかはその代表的な事例としてあげることが出来るだろう。

 そんなホロコーストに関する書籍は日本でも数多く出版されている。その中にはそれぞれの年齢にあった優れた書籍もまた多い。その中で、本書の位置づけはどのようになるのだろうか。

 著者はホロコーストが最初からヒトラーの明確な意図の下、計画的に実施された、というような考え方を本書においては採用していない。もちろん、このことはヒトラーユダヤ人に対する偏見がなかったなどと言うことは決して意味しない。ただ、最初からユダヤ人をガス室へと送るような綿密な作戦を立てていたわけではなく、最終的にガス室へ送致するという方法がとられた、ということを証明しているのである。

 当初ナチはユダヤ人を強制労働させる、あるいは、ドイツ国内から追い出す、ということをもくろんだ。それはマダガスカル島への強制移住計画などからも明らかにされている。しかし、対英米戦における戦局の悪化や独ソ戦の膠着から、徐々にユダヤ人の「最終的解決」(つまりは虐殺)をヒトラーの下に使える官僚たちが着々と実行していったとみるのが本書の狙いであろう。
 従来は、ヒトラーが先頭に立って、アウシュビッツやトレブリンカをはじめとする「絶滅収容所」(何とも恐ろしい名前だ)の計画を立てていたかのような印象を受けるが、実際は、ゲットーの収容から更にエスカレートして絶滅収容所へと向かう道筋には、そうした第三帝国下におけるアリストクラシーの存在を無視してはならないのである。(その典型的な人物こそが、かの「アイヒマン」である)

 著者が強調しているように、とりわけポーランドやドイツ軍占領下のソ連ユダヤ人というのがホロコーストで犠牲になったユダヤ人の半数を占め、さらにポーランドでは最大規模を誇ったウーチのゲットー内部における様子や、ホロコースト研究の簡単な見取り図が記されてあって、勉強になる。
 通史的にホロコーストを理解する一般読者も、これからホロコーストゼミ等でこの問題やこれに類する問題を真剣に勉強してみようと思うヒトが最初に当たるには最適であるだろう。

 かなりオススメ【推薦】です。☆でいえば5コですね。