ドイツ・ロマン派音楽の盛衰
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第221回定期演奏会〜ドイツ・ロマン派音楽の盛衰
2008/07/24(木)午後7時開演 [午後6時開場]@東京オペラシティ・コンサートホール
曲目
R.Strauss
Introduction and Moonlight Music from “Capriccio”, Op.85
R.シュトラウス / 歌劇「カプリッチョ」作品85より序奏と月光の音楽
R.Strauss
Symphonic Poem “Tod und Verklärung”,Op.24
R.シュトラウス/交響詩「死と変容」 作品24
Brahms
Symphony No.1 in C minor, Op.68
ブラームス / 交響曲 第1番 ハ短調 作品68指揮:飯守泰次郎
7月は都響の定期公演がないので(都響スペシャルは今回パス)、シティ・フィル&飯守のブラームスを聴きに行った。
実は当日は土用の丑の日だったんですね。オペラシティにあるウナギ屋にフィーリングで入った後、店を出たら「本日丑の日です」みたいな貼り紙があった。ウナギフツーに美味かったから吉としましょう。(近くでタバコを吸いまくられたのは参ったけど。なんせ料理の合間にまで吸ってるんだもんな。蒲焼きの香りもあったもんじゃない。ウナギを食いに来てるのかタバコを吸いに来てるのか…)
カプリチョは初めて聴いた。序奏はヴァイオリン2、ビオラ2、チェロ2による6重奏曲。指揮者は椅子に座ったまま、指示を出さず、そのまま音楽に身をゆだねているといったところ。そこから月光の音楽にそのまま繋がって、オケの合奏になった。
シュトラウス76歳の作品ということもあって、例えばメタモルフォーゼンや4つの最後の歌にちかい、一つ抜けきった響きを持った曲だった。
死と変容は青年シュトラウスの作品。まだ30代半ばのシュトラウスがある芸術家の死の瞬間を描写した音楽。英雄の生涯もそうだけど、この頃のシュトラウスの曲は、非常に仰々しい。というより、まさに後期ロマン派全開の音楽である。
ちなみにこの死と変容、1889年完成だから、日本では大日本帝国憲法発布の年でもある。そんな時代にこんな時代がかった音楽を作っていたシュトラウス、というか後期ロマン派はさすがである。ちなみに同年にはマーラーの巨人が初演されていたりもする。まさに爛熟。
曲はシュトラウスの交響詩らしく、最初、心臓の鼓動のような動機から始まって、死の床に伏した芸術家が人生を回顧し、途中、病の苦しみに襲われながらも最終的には心の平穏状態へと至って静かに幕が下りる、という展開。
これを飯守は実に良く描ききっていた。前回のエルガーやニールセンの時よりも非常に説得力がある。というより、恐らく、飯守のスタイルにはこっちのドイツロマン派的な作品の方が合うのではないか。ちょうど、陸上競技で、200メートルだったら、それにあわせてリズムを作るみたいに、25分程度のこの曲のダイナミズムの起伏が実に適切に捉えられている。正直な話、死と変容がこんなに良い曲だったとは今まで思わなかった。
後半のブラームス。
これも時代がかった演奏である。大雑把に言えば、テンシュテットのような、いわば「今どきそんな演奏するの」といった感じだった。第1楽章の出だし(スコアの指示はUn poco sostenuto)からしてゆっくり。そして38小節以降のallegroもそんなにallegroにならないので、序奏との対比としては不十分な気もする。けれど、フルトヴェングラーをはじめとする往年の巨匠たちはこの部分決して早くなかったので、これもアリかなぁ…とは思う。
2,3楽章も基本的なテンポはゆっくりめ。もっとも、2楽章はandante(歩く速さくらい)だからそれでいいワケだ。全体を通して、コンバスやファゴットがしっかりとした音を出すので、全体として低音が強めになって、重心の低い、ピラミッド型な音が出来ているから、なんだか浮ついたようなブラームスにならいでいて良い。ロマン派のブラームスらしいブラームス。
第4楽章のコーダ付近の金管から木管へと主旋律が移動するところは、そのまま金管に補強させていたように記憶しているけど、ちゃんと確認してなかったからどーだろうか。
こうして聴いてみると、飯守はこのあたりの作曲家と非常に相性が良いな。朝比奈没後、ベートーヴェンやブラームスの音楽って、マーラーなんかに比べると派手さがない感じを受けてしまいがちな印象を受けるんだけど、やっぱりちゃんした演奏を聴くと、(他のロマン派の曲よりも)ずっと良いなと感じる。
反対にいえば、ベートーヴェンやブラームスの本来持っている曲の魅力を十分演奏に表せない指揮者が多くなったということかも知れない。ともかく、ここしばらく聴けないタイプな重厚なブラームスを聴けた。
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