背に腹は代えられない?
今朝がた新聞でハンチントンが他界したことを知った。
ボストン 27日 ロイター
米ハーバード大学は、著書「文明の衝突」で西側諸国とイスラム世界との対立を予見した政治学者のサミュエル・ハンチントン氏が24日、マサチューセッツ州の介護施設で死去したと発表した。81歳だった。ハーバード大で昨年まで58年間、教壇に立ったハンチントン氏は、米フォーリン・アフェアーズ誌で発表した論文に加筆した「文明の衝突」を1996年に出版。世界がキリスト教、イスラム教、ヒンズー教、儒教といった宗教を基にした文明ごとに分裂し、それぞれの競合や対立は不可避と主張した。
同著は、冷戦後の世界における対立の構図がイデオロギーよりも宗教だとして大きな議論を呼び、特に2001年9月の米同時攻撃後に、西側諸国とイスラム世界との関係を予見したものとして話題となった。
ハンチントンと言えば『文明の衝突』ばっかりクローズアップされてしまうけれど、管理人のイメージだと、ハンチントンは民主化の「第三の波」に代表されるような「政治参加と政治体制」との関係性を明らかにしようとした比較政治学者であるという印象が強い。
民主化「第三の波」をかいつまんで説明すると、現代的な意味での(議会制)民主主義の成立には世界史上3つの波があったと考えるモノだ。
1つめが第一次大戦後に「民族自決」のスローガンのもと、ラテンアメリカ諸国の多くが独立をした。
2つめが第二次大戦後で、東南アジアやアフリカ諸国で植民地からの独立が起こった。(ただし、これらの国では急速な独立→民主化が定着せず、開発独裁体制などに代表的な権威主義体制となった場合がほとんど)
3つめが1970年代以降で、旧ソ連諸国や、開発独裁体制の国々で再び民主化へ向けた運動が活発になった。
こうしたハンチントンの分類の意図として、「民主化」というのは政治的問題であるかのように考えられているが、実は経済・社会的な問題であるという視点を提供した点において画期的だと個人的に思う。つまり、一定程度社会が豊かにならない限り、民主化の要件として経済発展がある程度必要である、という問題提起である。(もっとも、その後の比較政治学上の研究により、必ずしも…という結果になっているようなんだけれど。このあたりもっと勉強しないといけない)
そうした現在の状況においてこれからの「民主主義」をどう考えていくか。「国民の政治参加」と、「公的異議申し立て」が満たされていれば、それを高度な民主主義だとみなして良いのか(こういうシステマティックな見方は比較政治学からなされる)。また、政治思想プロパーのようにもっと本質的にデモクラシーについて徹底的な論考もあると思う(そうすると、逆に収拾がつかないかもしんないけど)。
ぐたぐた書いたけど、新聞読んだ後で、そんな感想。
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2008年は大変お世話になりました。
それでは!