あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

「冬物語」みた

彩の国シェイクスピア・シリーズ第21弾「冬物語

悲しみに閉ざされた冬の16年間
歌と音楽が結ぶ、離散と運命の再会
冬物語

次々と世に話題作を送り出してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ第21弾となる今回は、シェイクスピアが晩年に描いたロマンス劇『冬物語』をお送りいたします。
家族の離散や遭難などを経て、やがて幸せな大団円を迎えるロマンスストーリー。

2007年、シリーズ第16弾「コリオレイナス」にて難役の武将を演じ新境地を開いたと評価され、平成19年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞を受賞した唐沢寿明がレオンティーズ役に、「ペリクリーズ」でも二役を演じた田中裕子が今回もハーマイオニ役とパーディタ役に挑みます。そのほか横田栄司長谷川博己藤田弓子六平直政瑳川哲朗など、実力派ぞろいの豪華キャストが集結いたしました。

以上、さいたま芸術劇場HPより。

 オセローやヴェニスの商人は知ってたけど、冬物語は全然知らなかった。おかげで今回しれたのは良かったんだけどね。演出の蜷川幸雄もストーリーとしては面白くないけど、それゆえに芝居にするのりしろが大きい、みたいな話をパンフの中でしているので、演出の妙が見られたのでは?と思う。

 確かに、プロット自体は他の話に比べると面白味に欠けるかもしれない。話が途中まで進行した時点で、結末が読めてしまうあたりは、なんだかなぁ、というところである。
 シェイクスピアらしい、といえば、冒頭のいきなり嫉妬に狂うレオンティーズ。この役を唐沢が演じきったのはすごいことだ。ホント、あれは「狂ってる」感じである。その狂い方が滑稽に見えるからシェイクスピアらしさが一層際だつ。ああ、この世界観だな、みたいな。

 後半からのすべてを後悔し、毎日懺悔に明け暮れるレオンティーズもまた良い。前半部分の滑稽さがあるから、もう、どーにでもなれよ、的な気持ちさえする。しかし本人やまわりは真剣だ。こうした錯綜した感じ、にもかかわらず話に引き込まれてしまうのはさすが。
 藤田弓子はお節介おばさんにならないように気をつけながら演じたいって抱負を語っていたけど、半分は達成されていたかな。もっとも、管理人には「劇的大改造ビフォー・アフター」の印象が強すぎるからいけないんだと思う。高尚すぎるような芝居にしたくないという蜷川自身の演出上の意向もあるのだろう。ところどころコミカルだった。

 そして、庶民を演じる六平直政瑳川哲朗の存在感。王や貴族を演じた唐沢や藤田に対してこの二人の土俗性が際だっていて、まさに演出の意図したとおりになっている。この対比が実は身分の貴賎というのが幸不幸に直結するわけではないことを暗示しているのかなぁ…なんて思った。

冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)

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