3月のライオン (2)
- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2008/11/28
- メディア: コミック
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3月のライオンというタイトルからはイメージがつきにくいのだけれど、このマンガは将棋を題材としている。
詳しくは、wikipediaでも見てもらえればなーと思う。
さて、今回は養父の元から離れて暮らすという、取り敢えずの目標が達成されてしまい、目標を見失いかけている零(主人公)の話となる。
そうした零のもとへ義姉が彼の心を引っ掻き回しに来る。ここでの義姉のキャラクターはホントに魔性の女というより、根性の曲がった女だ。根性が曲がっているから、思いっきりぶん殴って涙ながらに説教をしても、恐らく彼女は更生しない。そんなキャラクター。(だけど作者はこのキャラクターの内面にも迫るんだろうか。マンガゆえに救いを持ってくる可能性は大いにある。反対に実社会だと、どーしようもない人間はそれこそゴマンといるのだが…)
しかし、だからといって、零はギクシャクした家族関係は自らが養子になったことによるものだと思いこんでいる。だから、そうした義姉の仕打ちに対しても拒むことなく、むしろ受け入れてしまうのだ。
勝つことに意味を見失いがちな、それでも踏ん張り続けなくてはいけない零と対局する棋士たちは、ある意味において苦しい人生を背負っているかのようだ。
棋士人生が懸かった老棋士や家族との生活が懸かった中年棋士と対局し、零は勝利を収める。しかし、勝ったとはいえ、むしろ勝ったからこそ、苦しむ零の苦悩は、17歳の少年の心のまさに疾風怒濤の情景に他ならない。
実の両親を失い養父に嫌われないように、将棋に自分の全てを懸けるしかなかった零にとって、対局した2人の棋士は勝利への執念に欠けるように映ったのだろう。
「大切なものを こんなにたやすく どうか頼むから 手離さないでくれよ」
と対局中、相手に対し、何度も心の中でこう反芻する零の、その持って行き場のない感情に青年のみずみずしさを感じた。
多分、今回の相手棋士たちが感情移入できないような魅力のないキャラになっているのも大きいのかも 。零の理不尽さへの憤りが分かるプロットになっている、と言えるだろう。