あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

それでは、どうしろと?

 その前に、前提として注意しなければならないのは近年の養護学校は20-30年前に比べて、とんでもなく大変になっている。
 理由は簡単で、医療技術が進歩して、かつてなら助からなかった命が助かるようになったの分、障害も重くなってしまった。そうした現状を養護学校の教員も保護者も理解した上で、よりよき生を生きるために日夜、共に歩んでいるのだ。
 そこで、以下の話。七生養護学校で行われた性教育について、一部の都議会議員教育委員会が介入して、一方的に非難を浴びせたことから裁判になったモノ。
 管理人はこの話を、数年前から『世界』で読んで、トレースしていた。けど、その時はまだまだ認知されず、コレが大きな流れになるのか? と気にもんでいたんだけど、ようやく表沙汰になってきた。

都議介入『不当な支配』 性教育授業 七生養護学校訴訟 地裁が賠償命令

東京新聞 2009年3月13日 朝刊

 東京都立七生(ななお)養護学校(日野市、現・七生特別支援学校)の元教師ら三十一人が、性教育の授業や教材を視察した都議から批判を受け、精神的苦痛を受けたなどとして、都議三人と都などに計約二千九百万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は十二日、都議の行為を「教育の不当な支配」と認定、都議三人と都に計二百十万円の支払いを命じた。 

 原告側の代理人弁護士によると、政治家が教育現場に介入し、「不当な支配」と認定した判決は、極めて異例だという。

 訴えられた都議は土屋敬之(民主)、田代博嗣古賀俊昭(ともに自民)の三氏。

 同校は一九九〇年代後半に生徒の性的な問題行動が発覚したことから、性器のついた人形などの教材を使い、全校を挙げて性教育に取り組んでいた。

 判決で、矢尾渉裁判長は「都議は政治的な主義、信条に基づいて性教育に介入した。教育の自主性を阻害し、ゆがめる危険行為で、旧教育基本法上の『不当な支配』にあたる」と、原告側の主張を全面的に認めた。

 同行した都教育委員会職員についても「教員を保護する義務があったのに、都議が非難をするのに任せたのは違法」と指摘した。都教委は二〇〇三年九月、学習指導要領を踏まえない不適切な性教育をしたとして七生養護学校の教員十八人を厳重注意した。判決は「都教委は、教員に性教育の助言や指導をしないまま注意した。都教委の行為は裁量権の乱用」と認定した。

 都議の視察をめぐり産経新聞が同年七月五日付の紙面で「過激性教育」などと報じ、名誉を傷つけられたとして原告が訴えた訴訟は請求を棄却した。

 判決によると、都議らは〇三年七月、同校の性教育を視察した際に、教員に「こういう教材を使うのは、おかしいとは思わないのか」などと教員の人格を否定するような発言をした。

として、社説でも次のように取り上げている。もっとも、朝日や東京はこうしたスタンスだけど、読売や当事者である産経はそれでも「行き過ぎた」性教育なのだという。

「不当支配」認定 教育介入へ当然の判決

東京新聞 2009年3月16日

 養護学校を訪れた東京都議が反論もさせないまま性教育を一方的に非難したのは旧教育基本法が禁じた「不当な支配」と認定された。現場に立ち入って教育の自主性を侵した行為を猛省すべきだ。

 東京都立七生(ななお)養護学校(日野市、現・七生特別支援学校)では一九九七年、生徒同士の性的交渉が発覚し、その後も性に関した問題行動が多発、学校全体で性教育に取り組んでいた。

 知的障害がある子供を対象とした学校で、分かりやすい性教育として、体の部位の名称を歌詞にして歌ったり、性器模型付き人形を用いていた。

 保護者との話し合いも重ねており、担当していた養護教諭は都教委の研修に講師で招かれ、授業の様子を講演したこともあった。

 都議三人は二〇〇三年、この養護学校を訪れた。東京地裁が判決で認定した視察状況はこうだ。

 三人は保健室で校長らに性教育に使われている人形などを提示させ「常識では考えられない」「不適切なもの」などと述べた。養護教諭には「こういう教材を使うのをおかしいと思わないか」「感覚がまひしている」と非難した。

 資料ファイルを持っていこうとする都議に教諭が「何を持っていくのか教えてください」と尋ねると、都議は「おれたちは国税と同じだ」とたしなめたという。

 判決は事実関係をこう認定したうえで、旧教育基本法が禁じた「不当な支配」に当たると判定している。「単なる視察だった」という都議に対し、意見交換することなく、学校を一方的に非難した違法行為だった、ともしている。

 判決に三都議は「視察と指摘で過激性教育が改善された意義は大きい」とコメントした。現場に介入した意図がうかがえる。成果を誇っており、反省がみられない。都民の負託を受けた現職議員として違法行為を恥じるべきだ。

 都教委は本来、政治的干渉から教育現場を守る役割がある。しかし、都議に同調し、教育の自主性をゆがめる行為に加担した。判決を重く受け止めねばならない。

 性教育は研究の歴史が浅く、さまざまな方法論がある。知的障害がある子供への性教育指導はさらなる工夫もいるだろう。特別支援学校では試行錯誤しながら実践の仕方を探っているのが実情だ。

 学校の努力を調べないまま、都議のいう“常識”だけで判断できる問題ではない。強引な介入や干渉は現場を萎縮(いしゅく)させるだけだ。

今回の訴訟に関する詳細は「web屋のネタ帳」のトコロで非常に分かりやすくまとまっている。
http://neta.ywcafe.net/000964.html
 そちらではnews23の映像を貼ってあるし、その内容をまとめて下さっている。今回、そのまとめを引用させてもらおう。

1. 知的障害者のための養護学校特別支援学級)で、小学生の男女数人がセックスしていたことが判明。

2. 女の子の日記には「今日はXX君と遊んだ」とあった。 ススんでるとかいう話じゃもちろんなく、性衝動を抑制するだけの理性はもちろん危険性の理解も、とにかく「うかつにやっちゃいけないこと」という意識がまるで無いから。そういう知能レベルだから。

3. 先生達は頭を抱えた。性教育をしなければと思った。でも健常者向けの性教育ではダメだと思った。なぜなら普通の小学生に視聴覚室で見せるような性教育を見て理解できるような知能レベルではないから。それが知的障害だから。

4. 「女の子のマンコに男の子のチンコを入れるとそこから赤ちゃんが出てきてオギャアでかわいいんだよ」と、ど真ん中ストレートに教えることにした。婉曲的な言い方が理解できるような相手ではないから。(実際にはマンコはワギナ、チンコはペニス、という風に放送禁止用語が避けられているようだ)

5. しかしそういう直球な言葉ですら現実的な理解に繋げられないから、しょうがないから自分達で絵やダッチワイフみたいな教材を作った。
 しかしそれでも人形で「ここが頭だよ」って言っても自分のこととは結びつけられないのが知的障害。しょうがないからオリジナルの歌を歌いながら「ここが頭」「腕だよ」「おっぱいだよ」と触りながら教えることにした。とても大切なところだと教えなければならないから。自分の体の大切なところを守り、他人に見せたりするものではないと教えなければならないから。
 それは自分以外の人にとっても大切なところだからうかつ触れたりしてはいけないと教えなければならないから。ハッキリくっきり具体的に正確にそう教えなければ理解してくれない子供達だから。

6. 2003年、都議会議員の3人が登場。「極めて不適切な性教育だ!」「(先生の)感覚が麻痺しているんじゃないか?」 (いやですから健常者向けならば過激と言えるかもしれませんがここは知的障害者向けの特別支援学級だと何度言ったらry)

7. 数々の手作り教材のほとんどが没収。教育委員会が登場して指導!指導!指導の嵐。校長は別件の難癖つけられて降格。先生は散り散りに異動させられる。

8. ちなみに2007年のテレビ報道がコレ。(先述の動画とはまるで誘導ニュアンスが違うところがマスコミ報道のいい加減さということ。知的障害者向けの教室の風景であるという説明が一切無いので普通の小学校の授業と勘違いするコメント多数。普通の社会人なら何か違うとすぐ気づくと思うんだがなあ)
YouTube - 小学校の異常な性教育授業風景(注:タイトルづけが既に間違っている。通常の小学校での映像ではありません)

9. 子供の保護者と先生が合同で提訴。で、勝訴。(今ココ)

この判決を受けた後、訴えられた(養護学校に介入した側)の都議のひとりである土屋ひろゆき都議はHPでこう語る。

まだ出た「とんでも」判決・過激性教育

過激性教育に関して、古賀、田代、土屋、市議などが学校を視察したことや、教育庁が処分したことを不服として、共産党系が訴えていた裁判の判決が出た。

ある意味、面白いと言えば面白い。三都議と教育庁合わせて10万円を養護教諭二人に払えと言うものだ。つまり、ひとり、25000円。交通違反で20キロ超過で払う金額に近い程度のもの。

これは、考えようだが、たったの25000円で過激性教育が東京から、全国から駆逐されたことを考えるとコストとしは安い。

そもそも、保健婦か何か知らないが「泣いた」と言うことだけで、圧力があったなどと良く言えたものだ。女の涙を知らない裁判官が判決を書くとこんな程度のものになる。

 ハッキリ言おう。七生養護学校で行われていた性教育は過激なモノでも何でもない。
 近年の養護学校における、性教育の困難さから、保護者や教員によって取り組まれたひとつの答えなのである。
 上っ面な「純潔教育」などという空虚な概念を振り回して、少しも養護学校の実態を調べようともしなかった土屋議員こそ、「真っ当な日本人としての恥の意識」があるならば、素直に自らの不覚を謝罪すれば良いだけのことだ。

 それをこともあろうに、判決後にこんな品性に欠ける文章を臆面もなく出していることに、まったく怒りを超えて呆れてしまう。
 それほどまでに、自身の貞操概念並びに、道徳教育のあり方について自信がおあり(土屋氏は医師でもあるということなので)ならば、ぜひとも、知的障がい児に対する性教育について、七生養護学校で実践されたものと、彼らに理解させることにおいて遜色ないモノを教えていただきたいと思う。