あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

世襲議員のからくり

世襲議員のからくり 文春新書 上杉 隆 (著)

世襲議員のからくり (文春新書)

世襲議員のからくり (文春新書)

 著者は『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』などを書いたジャーナリストの上杉隆。もっとも、最初からジャーナリストだったわけではなくてテレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリーになったという経歴。
 だから、政界の裏事情もそこそこ知っているようだ。

 時宜にかなった企画(というか緊急出版か?)だけあって、読み応えなく、サクサク進んでいく。往復の電車で読み切ってしまったあたり、その薄さが実感できよう。お陰で帰りがけに別の本をもう一冊買ってしまうという有様(苦笑)。まあ、無いよりマシだ、くらいだろうか。

 内容は薄っぺらいけれど、重要な指摘がある。それは政治資金管理団体は相続が可能であり、そこは非課税だと言うことだ。
 著者はそのことを指摘し、相続へのルール作りないしは課税対象にするように考えているようだけれど、このあたりはちょっと慎重に考えた方が良いと思う。共同通信社が行った4月の世論調査でも世襲に関し61・2%が「問題がある」と回答、「問題ない」の32・6%を大きく上回ったものの、2人に1人は世襲に問題がないと答えている。(曾祖母の田舎なんて世襲万歳みたいなところもあるから地方の人間の良家信仰みたいなモノは今後も無くならないんじゃないか、なんて管理人は意地悪く見ていたりする。)

 話はずれてしまうけれど、今の選挙制度の問題点は、小選挙区制でありながら1票の格差が大きいことで、中選挙区制の名残だろうか、農村部ほど人口も少ないのに1選挙区充てられている。この選挙区の区割りをもっと厳格にすれば、もうちょっとはマシになるんじゃないだろうか、という気がしないでもない。それに、一票の格差が縮まれば縮まるほど法の下の平等が達成されるわけだし。

 話を元に戻して、なぜ世襲が多いかといえば、それは中選挙区制時代に築き上げた議員一人ひとりの「個人後援会」が財産になっているからである。この個人後援会には、それこそ、政治家の理念に共鳴した有権者もいるし、支援することで公共事業などの見返りを期待する人間もいるだろう。そうした後援会を引き継ぐには政治家の子女が一番手っ取り早く、皆が納得する。

 と、いうわけで、世襲議員には「個人後援会の相続」という要素が決定的に重要であると言うことが本書を読めば分かるだろうと思う(もっとも、こうして指摘は岩井奉信日大教授らの研究があったと思う。レヴァイアサンしっかり読んでないから怪しいんだけど…)。
 なので、そういうことを全然知らなかったヒトは、本書を手に取ってみると良い。10分くらいの話のネタにはなるハズである。繰り返しになるが、内容的には新書よりもブックレットくらいの内容であることにご注意下さい。