あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

保守派の隘路? 

 こないだ、久しぶりに、何という発言なんだ!?と驚いてしまった。もちろん、悪い意味でなんだけど。
毎日新聞・1月18日配信の記事より

平沼赳夫氏:蓮舫議員の仕分け批判「元々日本人じゃない」
 平沼赳夫経済産業相(岡山3区)は17日、岡山市内で開いた政治資金パーティーのあいさつで政府の事業仕分けを批判し、仕分け人を務めた民主党蓮舫参院議員について「元々日本人じゃない」と発言した。

 平沼氏はあいさつの中で、次世代スーパーコンピューター開発費の仕分けで蓮舫議員が「世界一になる理由があるのか。2位では駄目なのか」と質問したことは「政治家として不謹慎だ」とし、「言いたくないが、言った本人は元々日本人じゃない」と発言。「キャンペーンガールだった女性が帰化して日本の国会議員になって、事業仕分けでそんなことを言っている。そんな政治でいいのか」と続けた。

共同通信も同じような報道をしている。
■「もともと日本人じゃない」 平沼氏、蓮舫氏を批判 
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011801000285.html

 問題点は3つくらいあるのだろうか。
 1つ目は、国籍法において日本は国籍については血統主義を採用している。つまり、世界中のどの国で生まれようと日本人から生まれた子供は日本人、という発想。ただ、これは単純な規定のように見えて、実はそれ程単純でもないと思う。つまり、形而上学的には「自分の親が日本人であることは、はたして疑いえない事実なのだろうか」ということだ。アメリカでも白人だと思っていた女性が記録を調べてみたら尊属のなかに一人だけ黒人と結婚していて、それゆえ、自分は白人ではないことから裁判に発展したこともある(←何で読んだか忘れたけどさ)。
 しかし、ともあれ、国籍法の要件に基づき、帰化をすれば、それは「日本人」である。「血統的な日本人」であろうと、同じ日本人に変わりない。その上で、平沼の発言(とその思想)は、額面通りに受け取るならば、外国籍から日本人へ帰化したところで、それは「日本人」でないことになる。
 つまり。この発言は「レイシズム」(人種差別)である。そこには日本生まれの日本育ちで、日本人以上に日本のことを知っていようが、血統(この表現も何だかなぁ)的に日本人以外であれば、彼らは永久に日本人になることは出来ない。
 2つめは「キャンペーンガール」だったという、過去の職業を持ちだして、その職業に対して蔑視観が存在する。つまりは職業に対する差別である。
 3つ目は事業仕分け蓮舫だけが行っているわけではないのに、彼女だけが批判の対象になっている。(おそらくは)女性に対する差別意識


 平沼は保守派の実力者として今でも評価する声はあるが、すくなくとも、この姿勢は保守でも何でもない。フランス国民戦線のル・ペンですらこんな発言はしないだろう。ル・ペンだって「極右」といわれるが、彼の国籍に対する考えは日本並みにしろ、程度のものだし。それでヨーロッパの文脈では「極右」だ。
 コレが本当の右翼ならば満州国よろしく「五族協和」の精神だろうし、そもそも、保守派にとって、台湾は対中国共産党へ連携できる重要なパートナーのハズである。
 だから、この平沼の発言は、たんなる人種差別以外の何物でもなく、欧米でこのような発言をしたら、一発で政治生命はアウトだろう。余計な世話だけれど、平沼赳夫の祖父・平沼騏一郎右翼団体「国本社」を創設し、昭和天皇から「ファッショは否」と呼ばれながらも、近衛文麿の後継として内閣総理大臣を務めた人物。
 終戦後はA級戦犯として、終身刑を言い渡されるも、病気のため仮釈放。その直後に死去している。そのロジックならば、同じように「A級戦犯の孫」という差別もまた成立すると思うのだが、それについてはどうなのだろうか?


 保守派の隘路は保守でも何でもない、単なる人種差別者みたいな人間が保守面をして、彼ら全体の評判を落としているところだろうか。ハッキリ言えば、一般の感覚からすれば引いてしまうような主張を保守の枠からはみ出して言ってしまう。ちょうど、かつての左翼のなかに「ソ連バンザイ」みたいなヒトが混ざっていたのと同じだ。
 本来の保守主義は一種の姿勢や態度であって、理念化できるようなものではないけど、それが理念化することで、理性や理念への懐疑といった本来、保守主義を構成する要素から外れたものになってしまうだろう。