あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)

「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)

「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)

まとめた方が良いけど、簡単なメモ書き。
ヒマがあったらちゃんと書きます。

 著者は武蔵大学社会学部教授(社会学)。そして、下が、紹介文。

 「高度経済成長以降、完全に忘れられていた格差と貧困の問題が噴き出している昨今、日本人は社会科学的思考に目覚めはじめたと言える。しかし、格差には多様な側面がある。戦後六十数年の間に、どのような格差の拡大や縮小があったのか―。さまざまなデータを駆使し、各年代を象徴する事件や出来事を交えながら、敗戦直後から現在にいたる格差と階級構造の歴史的変遷を描く。」

 というわけで簡単なコメント。

 戦後から現在までを10年単位で区切った上で、どのような「格差論」が展開されていたかを分析するメタ理論的な著作。もちろん、上で述べられているように、その前提には格差を測る様々な指標が用いられている。たとえば、国民所得の平均値で、本当に個々人の豊かさを表すのか?といった具合である。
 つまり、平均値にすると豊かなように見えてしまうが、高額所得者と低額所得者層が二分化しているような社会だと、平均はそこそこの値に落ち着いてしまう。つまり、極端な話、年収10億のヒトと年収100万のヒトだと、平均が年収5億50万円になるが、それは実態を正しく反映している数字だといえない。だから、著者はそのあたりに配慮しながら、その当時が、どのような社会であったかをデータをとりながら明らかにしていくのである。

 面白かったのは、人々の記憶に反し、終戦後の10年間(1945-55)は、格差の少ない社会だったという。これは、データをとるとハッキリしている。ただし、ここには注意点があって、この時代は、みんなが貧乏だったから、結果として格差が少なかった。そして、当時は終戦後の経済混乱で、所得よりも、物々交換がメインだったこともあるだろう。


 さて、著者は「階級」概念がマルクス主義的文脈で使われているのを認めつつも、本書においても敢えて「階級」概念を分析枠組みとして持ち出す。そうすることで、それぞれの階級がどのような階級間移動や所得変化が起こったかを分析している。たとえば、農家の子どもが家を継ぐ場合、工場労働者(=ホワイトカラー)になる場合、公務員や会社員(=ホワイトカラー)になる場合、などである。

 そうしたデータから、日本は高度経済成長期まで格差は縮まり、バブル崩壊以降、格差は拡大していることが明らかになっているという。ただし、実際、バブルの頃は世間では「格差」がクローズアップすることはなかった。それにはバブル経済という状況下での社会状況が「格差論」を後景に退けたという側面もあるのだろう。

 ともあれ、今までの階級論争を俯瞰しつつ、データを駆使して客観的に分析した好著であり、格差論争について、その社会の変化と併せて知ることが出来る好著である。