あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

党と国家―政治体制の軌跡 (叢書 中国的問題群)

党と国家―政治体制の軌跡 (叢書 中国的問題群 1)

党と国家―政治体制の軌跡 (叢書 中国的問題群 1)

 東大出版会とも被ってないとも言えない、同時期にシリーズ化された、こちらは岩波の「叢書 中国的問題群」。

 本書は副題を含めて考えた方が、著者の意図がよく分かるだろう。
 両氏は放送大学慶應大学でそれぞれ中国近代史、現代史を研究する専門家である。

 本書において、一貫するのが、「党国体制」という中華民国ならびに中華人民共和国に共通する党と国家のあり方の共通性である。その関係を、おもに編年体の党と国家の政治関係史の視点から叙述することによって、「党」抜きに中国政治の理解が出来ないことを読者に痛感させている。

 ただし、中華民国も、中華人民共和国も、それぞれ外来思想である「民主主義」や「共産主義」を特殊、中国的な事情もあったのだろうが、「そのように」受容していくのが、中国らしいといえば中国らしい。
 三民主義でスタートした中華民国が、党国体制へと結果としてなっていったのは、恐らく、列強により侵略を受けていたという、国内状況だけではなく、法治ではなく、徳治に基づく人の支配という政治文化が中国にはあったからではなかろうか?

 その点は、本書においては触れられていない。
 もちろん、胡適を代表に、当時の中国でもヨーロッパ的な民主主義を主張する知識人はいた。ただ、それが大きな運動には至らなかったのは、なぜかという問題設定の仕方もあるだろうとは思う。(ただ、このあたりになると、本書のテーマではないだろうけど)
 
 党と国家の関係を、現代の比較政治学の手法を使って分析したモノだ、と期待してこの本を読むと、肩すかしを食らうが、一般向けに書かれた本としては多分に学術的であり、その手の読者にとっては面白いだろう。

 とりわけ、主たる情報源がインターネットのような御仁にはしっかりと読まれることをおすすめしたい。