あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

佐藤賢一『フランス革命の肖像』 (集英社新書ヴィジュアル版)

フランス革命の肖像 <ヴィジュアル版> (集英社新書)

フランス革命の肖像 <ヴィジュアル版> (集英社新書)

第1のピークを過ぎたので、ようやく読書メモを書く。

 顔にはその人の歩んだ人生が刻まれると良く言われるが、本書はそうした「顔」に注目した作品。
 アメリカ建国の父の一人フランクリンから始まって、ナポレオンの登場までを、当時活躍した人々の肖像画を採り上げながら、彼らのエピソードを中心としてこの時代について語った一冊。語り手は「小説 フランス革命」の作者佐藤賢一である。

 貴族に多かったジロンド派には、そうした育ちの良さと決断力の無さが、理想の追求のあまり恐怖政治へと進んだジャコバン派にはそうした若者特有のピュアさ(もっとも、それが過度だったわけであるが…)が見てとれる、といったら言いすぎであろうか。

 特徴的なのは、当時の肖像では国王ルイ16世は決して愚鈍な人物として描かれなかったと言うことだ。当時の肖像ではいかにも偉容のある、「フランス国王」としてのルイ16世なのである。そうした彼が、愚鈍であるような印象を後世の我々が持つのは、革命後、彼がフランス国民を見捨てて、逃亡する「ヴァレンヌ逃亡事件」が決定的な契機であった。

 つまり、長年、フランス国民の上に君臨していた「ブルボン王朝」「フランス国王」は国民の敬愛を集めていたが、そうして、今まで築き上げてきた威厳や国民からの敬愛は、たった1回の裏切りによって失墜してしまう。

 信頼は得るためには長い年月を必要とするのに、失うときはたった1回の出来事で充分だという、日頃、人から言われるテーゼの象徴的な歴史的事例であった。


 フランス革命期に活躍する人物を肖像と共にほぼ網羅した本書は、この時代の理解を豊かにするのに適した一冊であるといえるだろう。