今週も映画を観たので、3連休も利用してその感想を書く。
(先週観た、「闇の列車 光の旅」はまた後日)
多分、管理人の人生で初めてのポーランド映画。「戦場のピアニスト」も舞台はポーランドなのだけれど、純粋なポーランド映画とは言い難いと思うので、その意味でも珍しいモノを観たな、と。ちなみに、ポーランド語はちっとも分からない。ドイツ軍の会話で端々に聴き取れる単語があるくらいだった。
原題では「カティン」のようだ。おそらくは、日本人にとっての「ヒロシマ」や「ナガサキ」と同じような意味を持つのだろう。僕らにとっては「カティンの森」でないと、しっくり来ないのだが。
ちなみに、カティンの森事件というのは、wikipediaからの引用によると、次のようになる。
カティンの森事件(かてぃんのもりじけん、ポーランド語: Zbrodnia katyńska、ロシア語: Катынский расстрел)とは、第2次世界大戦中にソ連のグニェズドヴォ(Gnyozdovo)近郊の森で約4400人のポーランド軍将校、国境警備隊員、警官、一般官吏、聖職者がソ連の内務人民委員部(NKVD)によって銃殺された事件。「カティンの森の虐殺」などとも表記する。
今年、ポーランド大統領がこの事件の追悼式に出席するために現地に向かったが、途中、濃霧のため登場した飛行機が墜落したというのは記憶に新しい。実は、恥ずかしいことに管理人もこの事件によってカティンの森虐殺事件について初めて知ったのだった。
映画の主なストーリーとしては、ポーランド軍将校とその妻を軸に、彼らの家族や関係者が、ナチスとソ連によってその人生と生活を翻弄されるという、現代ポーランド史の一側面を垣間見る作品になっている。もちろん、中心テーマはカティンの森虐殺事件なのだが、この事件そのものを巡る政治的な対立もあり、なかなか考えさせられた。
wikipediaにあるように、カティンの森虐殺事件はソ連赤軍によって引き起こされた虐殺事件なのだが、ポーランド占領中のナチス・ドイツは、この事件をポーランド国民の反ソ連感情の高まりに利用しようとした。しかし、ナチス・ドイツの敗北後、今度はポーランドを占領したソ連によって、この事件は「ナチスの仕業」であると公式に発表する。
そして、ソ連の占領、その後も「東側」陣営として共産主義国であったポーランド政府は長らく、この事件はナチスの引き起こした事件であると公的には認識していた。
とはいえ、一方で、事実を知る者たちは、政府やソ連の発表がでっち上げであること、また、にもかかわらず、真相の究明がその政治的状況から極めて難しいこと。さらには、その真相を公表した場合、自分と家族にどのような危害が加わることは容易に想像がついた。したがって、自分の肉親や友人がソ連軍によって殺されていながら、それを非難し、謝罪を要求することはできないという状況であった。
この映画は、そうしたポーランド人の苦悩が描かれている。ただし、様々に散りばめられた個々のエピソードは映画が終わっても回収されきれていない(基本的に主人公各のポーランド将校とその妻の話が完結するに留まる)。その回収されきれていない部分は映画を観た人間が想像して補うしかないのだが、いかんせん、極東の島国である日本人にとって、この歴史的事実に対する知識が不足しているが為に、その想像は困難だろう。
とはいえ、観ることが出来て良かったと思える映画だった。
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