あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

奥井智之『社会学の歴史』

社会学の歴史

社会学の歴史

 著者は亜細亜大で社会学を講じる。タイトルのとおり「社会学の歴史」について扱った、いわば理論史にあたる。とはいえ、東大出版会から出ているから専門書なのかと言えば、そうではない。一般書なのか?といえば、それもまた微妙である。
 ただ、そのように言ってもメタ理論である「○○学史」はどうしても初学者には難しいところがあると思う。多少、社会学についての基礎的な概念を押さえておかないとそもそもその歴史を語ったところで理解が難しいシロモノだからだ。

 なので管理人の独断的感想になるが、これは学部2年から3年に進級するあいだに読まれるべき本だと思う。「社会学入門」のような本なり講座なりを一通り終えて、専門に進む前に、大ざっぱな枠組みを把握して全体像を掴む。そういうものを意図していると思う。

 Amazonのレビューでは今ひとつ、ではあるけれど、学問がこれだけ細分化した現在であってもひとりの学者が思想史の通史について本を書く、ということが決定的に重要だと思う。もちろん、これよりも「個々に優れた」社会学史のテキストは存在するだろう。しかし、それらのテキストは複数の著者によって書かれているがゆえに、どうも理論史の一つの流れ、という全体像を俯瞰した場合、それぞれの社会学者がどのように位置づけられるか、という点がぼやけてしまう。

 本書はコントから始まって、バウマンまで20弱の社会学者についてその人物紹介と理論についてとりあげる(その他に5人の日本人についても紹介している)。社会学という学問の特性にもあるのだろうが、とりわけコンテクストに重点を置いているように管理人には思えた。たとえば、マルクスフロイト社会学理論の範疇に含めるのかどうか?議論は分かれると思う。しかし、著者は彼らの果たした社会学史上の役割に注目する。そのあたりもなかなか面白い。