あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

フランス・ブリュッヘン プロデュース ベートーヴェン・プロジェクト 第1回

2011/02/08 19時15分 すみだトリフォニーホール

ベートーヴェン交響曲第1番 ハ長調 op.21
ベートーヴェン交響曲第2番 ニ長調 op.36
ベートーヴェン交響曲第3番 変ホ長調『英雄』 op.55

指揮:フランス・ブリュッヘン
管弦楽新日本フィルハーモニー交響楽団

 ついにやってきたブリュッヘンベートーヴェンである。
 リコーダーの名手にして、古楽器による「18世紀オーケストラ」を設立し、古典派の作品を中心に、かつて存在した「フィリップス レーベル」に多数録音も残している「あのブリュッヘン」が新日本フィルベートーヴェン交響曲全曲演奏をすると言うのだから、期待しないわけがない。

 久しぶりのすみだトリフォニーホールだが、さすが、前評判も高かっただけのことがありホールは盛況だった。開始前にロビーをウロウロしていたら「朝比奈さんと比べるとねぇ…」みたいな会話があったから、思わず振り返ってみたら、クラシック演奏家の写真家である木之下晃が来ていた。なるほど、今回撮影するのか。

 ブリュッヘンはまだ70代ながらずいぶん痩躯になって、背中も丸まってしまったように思う。だから「朝比奈さんと比べると・・・」なんだな。確かに、朝比奈、フルネ、スクロヴァチェフスキとくらべると、老け込むのがいささか早い気がする。 指揮台まで歩くのもなかなか難儀そうで、ちょっと心配だ。椅子に座ったまま演奏開始。

 編成は10・8・6・4・3型の対向配置。最近はピリオド奏法も流行ってこのカタチ増えてきたけれど、奏者は慣れているんだろうか?

 第1番。
 属七の和音から序奏は非常にゆっくりとしている。第一主題からにわかに勢いを増していく。それは続く第2、第3楽章でも同じである。ただ、第4楽章に入ってようやくエンジンがかかった感じがした。その勢いで最初からスタートさせれば良かったのに。ブリュッヘンが疲れたのかオケが疲れたのか、それともそういう解釈なのか。ハイドンの延長みたいな感じだけれど、そこに当然に感じられる、若き日のベートーヴェンの勢いみたいなものは後退している。ブリュッヘンとは相性が良い曲なんだから、もっと思いっきりやって欲しいなぁ。ただ、最後の和音は歌舞伎の見栄みたいに、あえて一拍おいていた。なるほどねぇ。

 第1番が終了した後、舞台袖には戻らず、そのまま第2番へ。

 第2番。
 第1番の終楽章のエネルギーがここではそのまま乗っかっている。オケも小さな編成ながら非常に良く鳴っている。もっとも、これはトリフォニーホールだから可能なんだと思う。サントリーや文化会館ではちょっと厳しいハズ。その分、今回はホールでトクしている。第1楽章のエネルギーはなかなか溌剌としたものだ。けれど、2楽章のラルゲットは音が薄くってしまってなんだか貧相だった。ここはたっぷり鳴らしてくれれば安心だという管理人の趣向もあるのだが。
 これは今回全般に言えることなのだが、弦楽器をノン・ヴィブラートでpのような弱い音で弾くと、音程が不安定になってしまうきらいがある。このあたりはブリュッヘンの解釈もあるだろうし、そうした奏法になれてないオケの経験もあると思う。


 休憩挟んで第3番「英雄」

 いきなり最初からやってくれた。何か怪しいな、とは思っていたのだが(苦笑)。
 ブリュッヘンは指揮台につく前に、コンマスのあたりでやおら手を挙げ出すと、その直後から「あの和音」が鳴り出した。それで第一主題が演奏され始める中、悠然と指揮台に座って指揮を始めていた。この1楽章がアレグロ・コン・ブリオであることをハッキリと示すかのような推進力のある演奏。コーダの主題でトランペットはしっかりと欠落させ(個人的には好きじゃないんだけど)てはいたが、木管がそれなりに補っていたので、取り敢えず主題は聞き取れる感じだ。そこは流石に、弦の響きが透明かつ少人数が効いているのだろう。

 第2楽章はホルンのコーラルが一つの見せ場だと思っている管理人からするとイマイチだった。抑え気味にしてしまうから盛り上がらない。ただ、ホルンそのものは素晴らしい。3人ながら、コンバスが中心にしっかりとオケを支えているという和声の基本に忠実な演奏である。

 第3・4楽章は充実した名演。時折、ビックリ箱をひっくり返したような表現がしばしば出てくるが、思い返せば「ピリオド奏法」と称しながら、ずいぶん思い切った演奏を昔からやっていたので、その意味で言えば、「やっぱりブリュッヘンは健在である」と思わせる演奏だった。第3番に限って言えば、急加速をしたり、途中の和音のトコロでブレーキをかけたり、非常に個性的で、面白い演奏で、CD以上の出来である。

 難しいのが、それが涙を流すほどの感動につながるかと言えば、アイディア勝負みたいになっている向きは否定できない。ただし、今回の演奏会は、恐らく管理人の記憶に一生残るであろうインパクトは与えたことは間違いない(笑い)。

 それと比べると、いわゆる音大に出て「キッチリ指揮の勉強をした若手」は一体何を学んでいるのやら・・・。毒にも薬にもならぬベートーヴェンなんて、ねぇ。

ベートーヴェン : 交響曲第3番「英雄」、第1番

ベートーヴェン : 交響曲第3番「英雄」、第1番

 フィリップスのヤツ。こっちの方がジャケットも好き。

 次回の4番と5番「運命」はチケット買ったので楽しみだ。