- 作者: 石川日出志
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/10/21
- メディア: 新書
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毎度毎度だが、これだけの新書ブームにあってもやはり「新書御三家」(岩波・中公・講談社現代)から出る本の数々は魅力的なものが多い。個人的には次いでちくま新書を買うことが多いのだが。
そんななかで、やはり岩波新書は「ザ・新書」という感じがする。
このシリーズ日本古代史シリーズも、「新書で日本古代史シリーズを出す」という会社側の意気込みが伝わってくるラインナップだ。記念すべき第1巻は原始から弥生までの日本古代史を扱う。
著者の石川日出志は考古学が専門の明治大学文学部教授。
近年の考古学上の研究が進んでいる。それは単純に日本国内だけの考古学上の成果が取り入れられているだけでなく、同時代の韓国や中国とのそれとも突き合わせながら、当時がいかなる時代であったかを東アジア全体を通じて明らかにしようという試みがあるからである。
この第1巻は先史時代から古墳時代の始まりまでの列島の歴史を最新の考古学的知見を取り込みながら説いていく。タイトルの通り「農耕社会の成立」を基本テーマに据える。
縄文=狩猟・採集、弥生=稲作、そして、両者はなぜか断絶したモノである。そんな素朴な「通説」を管理人が高校くらいの時は単純な歴史理解がまだ存在していたように思う。そうではなく、列島には地域ごとにさまざまな生活形態があったことを本書は教えてくれる。
著者も指摘するように「弥生文化は縄文文化の後継者」なのであり、東日本にもまたそうした相互の関わり合いのなかから弥生文化は広まった。そこには断絶よりも漸進、連続があり、北海道や沖縄には独自の文化が存在したのである。
当たり前と言えばそうなのだが、しかし、ここに歴史の豊かさを感じずにはいられない。