あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

大系 日本の歴史〈1〉日本人の誕生 (小学館ライブラリー)

大系 日本の歴史〈1〉日本人の誕生 (小学館ライブラリー)

大系 日本の歴史〈1〉日本人の誕生 (小学館ライブラリー)

 随分と昔に出ていた小学館版日本の歴史。
 新しいシリーズも出ているんで、すっかり影が薄くなってしまったのだが。

 ただ、それでも中央公論社から出ていた日本の歴史シリーズは今でもスタンダードらしく、史学の先生にしきりに勧められた記憶がある。当時は講談社版の日本の歴史シリーズが発売されていた時期だったんだけどね。


 さて、著者の佐原真(1932−2002)はかつて国立歴史民俗博物館館長などを勤めた人物だ。先にも触れたとおり、ハードカバーで発売された同書が文庫化されたのが1992年であり、ここで取り上げられている学説は一昔前のモノも少なくない(例えば、稲作起源の説明など)。
 しかし、専門用語ばかりが飛び交う考古学の分野において、はじめて当時の人々の生活や世界観がわかりやすく解説されているものと言える。一例を挙げれば、なぜ、稲の収穫時、根本から稲を刈らずに稲穂だけを石包丁で切り取るのか? それは直播きすることによって、生じる稲の発育や、現在の稲とは違って高さのある稲のために稲穂だけ切っていたようだ。

 また、竪穴住居にする理由など、高校日本史の教科書では事実として書いてあるが、それがなぜ必要であったのか、ということが今ひとつ分からずじまいである。そんな、「どうしてそうなった?」ということを素通りできない人にとって、本書は丁寧に説明した名著であろう。