あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

 七生養護学校のこと

 管理人が学生時代から注視してきた「七生養護学校事件」の高裁判決が出た。至極真っ当な判決に安堵した。下の記事に事件の簡単なあらましが載っている。

養護学校性教育:都議と都に2審も賠償命令 東京高裁 (毎日新聞

 東京都立七生養護学校(日野市、現七生特別支援学校)で行われていた性教育を巡って、元教員ら31人が「都議から不当に非難された」などとして都議3人や都などに賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は16日、210万円の賠償を命じた1審・東京地裁判決(09年3月)を支持し、原告・被告双方の控訴を棄却した。

 大橋寛明裁判長は非難の対象となった性教育の具体的内容を検討し、「学習指導要領に違反しない」と判断。都議らの行為を「教員への侮辱」、都教委の対応を「教育への不当な支配から教員を守る義務を怠った」と批判した。性教育を理由にした教員への厳重注意も違法とした。

 また、大橋裁判長は教育委員会の権限について「教員の創意工夫の余地を奪うような指示命令までは許されない」と指摘。「学習指導要領に法規としての効力があるとは言い難い」とも述べ、教育内容や方法は学校現場の幅広い裁量に委ねられるべきだとした。

 判決によると、同校は性器の名称を歌詞に取り込んだ歌や性器の模型を使った性教育をしていた。ところが、03年に都教委幹部とともに同校を視察した古賀俊昭土屋敬之両都議と田代博嗣前都議は「感覚がまひしている」などと批判し、都教委は教材を没収、教員らを厳重注意とした。【和田武士】

毎日新聞 2011年9月16日 19時46分

 都立七生養護学校(現、七生特別支援学校)は名前の通り肢体不自由や知的障がいを持った生徒が通う学校である。ただし、数十年前ならいざ知らず、現在の特別支援学校に通う児童や生徒は身体障がいと知的障がいを両方持っているケースが大半(というよりほぼ全て)である。
 そうした知的障がいをもつ子どもを相手であっても、当然のことながら性教育は行われなければならない。なぜなら、思春期を迎える生徒たちは性教育をきちんと受けなければ、学校内で性的行為を行うことすら起こりえるからである。彼らを持つ父母は自分たちの子どもが望まない妊娠をさせてしまわないか/してしまわないか、心配する人もいるほどだ。

 ただし、普通学校とは異なり、保健の教科書を読んで教員の話を聞けばそれで理解できるという児童生徒ではないから、養護教諭はあの手この手を使って彼らに性に対する正しい知識を身につけて貰おうと工夫を重ねる。
 抽象的な話が理解出来ないから、具体的な話になる。それもストレートに言わないと分からないし、普通に話したのでは分からないから、歌にして振り付けをつけて覚えて貰う。あるいは、具体的にイメージしやすくする為に、性器のついた人形を実際に使う。

 障害児教育の現場では、それが過激であるとか、ジェンダーフリーであるとか関係なく、子どもたちに正しい性の知識を理解させる為の必要な手段なのである。

 だが、当時、男女平等参画社会などへの反動運動である「バックラッシュ」が保守系メディアや議員、ネットウヨクなどによって広まっていったことで、この七生養護学校での授業はとばっちりを食らってしまった。

 管理人が問題だと考えるのは、こうした政治運動によって障がいを持つ児童生徒の学習権が完全に剥奪されてしまったことだ。そして、養護学校でのこうした実践を問題視した保守系メディアや議員たちは障害児教育については全く何も知らない「究極のズブの素人である」。
 だが、そうした素人が議員なりメディア関係者なりであれば、それは権力を持ちうる。まさに巨大な害悪であるのだが、今回の判決は、そうした政治家サイドの暴走に対して、司法が法に基づいて判断を下すのは非常に重要だろう。

 ちなみにサンケイや「感覚がマヒしている」といって批判した古賀俊昭土屋敬之田代博嗣たちは反省することはない。

 ちょっと古いけど、「七生養護学校の件について(荻上式BLOG)」
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20090317/p1
は幅広くトレースされていて、かつ、良くできた考察。