あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

アントニーとクレオパトラ

 観てきた。どうやら蜷川によるこのシリーズも残り1/3らしい。全部終わるまであと5年くらい掛かるみたいだけれど。
 管理人が観たのは千秋楽の公演だ。じゃじゃ馬馴らしの時と同じく、今回も前列で楽しむことが出来た。おかげで表情だけではなくて、シワまで見える(笑い)。

 アントニークレオパトラは、戯曲として読むと面白くないけれど、実際に役者を動かしてみるとなかなか面白い、というようなことを蜷川自身が言っていたが、果たしてどうだろうか…。そんなことも考えながら観ていた。

 吉田鋼太觔は本当にすごい役者だ。今回も歴戦の勇将だが、クレオパトラに誘惑されたアントニーを演じていた。アントニーの持つ両面が圧倒的な存在感を持って舞台に登場する。舞台に磁場が発生しているかのようである。
 安蘭けいは、博物館とかで見る「クレオパトラ像」まんまなイメージだった。もともと宝塚の男役だから、どこか凛々しさがあるようにも思うが、たしかにクレオパトラは「エジプト女王」なのである。その妖艶ともいえる妖しいまでの美しさと魅力が、まさに蛇のようにまとわりついてくる。そして、その魅力にアントニーは惹きつけられ、逃れられない。

 カエサル演じる池内博之は前二人に比べると、舞台キャリアで劣るのだろうか、千秋楽のこの日は声がいささか枯れ気味だった。吉田、安蘭ともに響き渡る声で話していただけに、チョット残念だ。舞台はある意味長距離走でもあるから、そのあたりのペース配分は必要だと思う。ただ、もともと日本人離れした容姿であるので、運命が味方している「カエサル」役としては適任かもしれない。

 あと印象的だったのは橋本じゅんが演じたイノバーバスだ。アントニーに仕え、その快活なキャラクターで楽しませながら、クレオパトラに狂っていくアントニーのもとを最後に去り、そして、そのことを激しく後悔していく。助演男優賞ものである。

 ところで、この舞台は場面転換が非常に多くて、演出上、集中力を切らさないようにするのに大変だろうとおもう。だが、蜷川はローマを象徴するモチーフと、エジプトを象徴するモチーフを中央に交互に置き換えることによりクリアしていった。
 予め、左右と奥に観音開きのようなカタチをしている白い壁を作って、それをホリゾント代わりに、エジプト風の模様をつけた光を当てたり、そうでなかったりしながら、大規模にセットを入れ替えることなく、この難問を解決していたのは凄いことだ。

 終演後は、蜷川氏登場。誕生日だったらしく、会場でやや不揃いな(笑い)ハッピバースデーの歌を観客ともども歌っておわり。

 「そりゃシェイクスピアにもつまらない作品はありますよ」と言った蜷川だったけれど、うん、まあ、確かにね。つまらない、と言うほどじゃないけれど、前回の「じゃじゃ馬馴らし」に比べると、作品としては確かに劣るかも。

 だからストーリーよりも、役者の力量と演出に大いに感動した芝居だった。ともあれ、楽しく見られたのでよかった。


2011年10月1日(土)−15日(土)

会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
演出:蜷川幸雄
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子

出演者:吉田鋼太郎安蘭けい池内博之橋本じゅん中川安奈、坂口芳貞、横田栄司熊谷真実

坂口芳貞、横田栄司、青山達三、手塚秀彰、塾 一久、廣田高志、池谷のぶえ
妹尾正文、大川ヒロキ、岡田 正、石母田史朗、二反田雅澄、清家栄一、新川將人
井面猛志、篠原正志、田村 真、下塚恭平、高嶋 寛、小久保寿人(さいたまネクスト・シアター)
堀 源起(さいたまネクスト・シアター)、露敏(さいたまネクスト・シアター)