あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

近代日本とアイヌ社会

近代日本とアイヌ社会 (日本史リブレット)

近代日本とアイヌ社会 (日本史リブレット)

 著者は現・新潟大学教授(日本近代史)である。
 タイトルはかなり大きなテーマであるが、あの「北海道旧土人保護法」が成立する前後の制作過程について歴史的経緯について述べられた本だ。アイヌの和人への「同化」を促したと否定的文脈に捉えられる土人保護法だが、この法律制定の背景には幕末から明治以降、アイヌが植民する和人に追いやられる形で相当に生活が困窮していた様子が窺える。大規模な農耕には不慣れであり、西洋近代的な土地所有関係を理解しないアイヌは和人からの詐欺にも直面していた。
 そうした状況下にあったアイヌに対し、政府は積極的に「保護」しようとしたのが北海道旧土人保護法である。しかし、ここではアイヌは「優勝劣敗」の現実のもとで絶滅しつつあると言い、和人(「内地人」)による土地収奪を防ぐとともにアイヌへの農業奨励・衛生補助・教育補助などを進めるというものである。そこには明らかにアイヌを民族的に劣等な存在としておく発送が存在する。その意味で近代以降の北海道開拓史は同時に植民地の歴史でもある。
 本書は既に述べたとおり、旧土人保護法の成立過程の歴史、法制史の側面がかなり強い。タイトルには「アイヌ社会」とも銘打ってはいるが、当時の生活スタイル並びに生活水準について、本書を読んでも分からない。従って、生活史を知ろう思ったら別の本にあたる必要があろう。