あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

突然、僕は殺人犯にされた

 芸人・スマイリーキクチが10年間にわたって受け続けたネット中傷事件を本人自らが振り返ったモノだ。日記というかモノローグというか、その手の類である。

 足立区で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件とスマイリーキクチがたまたま同じ足立区出身であったことがどうも背景にあったらしい。また北芝健の著書にその犯人であるとミスリードを誘う表現もあるようだ(無論、北芝側は否定している)。しかし、問題なのはキクチが明らかなデマであり、正確に情報発信しているにも関わらず、「信じている」ネットユーザーには事実の提示は何の効果もなさないと言うことだろう。

 そして、一部の警察官や検事たちはこうしたネットでの中傷(これは人権侵害である)・ないしは犯罪行為について驚くほど無知であると言うことだ。そうした無知な人物が事件の担当になってしまうと、まるで見当外れな対応しかせず、むしろ、警察検察によって被害者が二次被害に遭うような印象すら受けた。また、中傷している人間たちの度し難いリテラシー能力の欠如と人権意識の低さにも愕然とする。

 逮捕されて、はじめて自分のやってきたことを自覚しているが、反省するわけでもなく「なぜ自分だけが」という反応を見せている。警察の前ではキクチ本人に謝罪をしたいと良いながら誰一人として謝罪に来ない事実。正直なところ、これでは中傷された側は泣き寝入りであろう。ネットを取り巻く環境に人間の人権意識も、警察や検察も追いついていないようだが、これは喫緊に検討すべき課題である。

 文章は凝ってないし、抽象的な話もないので、サクサクと読める。もっとも、当たり前だが、読んでいて楽しいような内容ではない。 今の日本ではコレが限界だと思うと、非常にやるせない。そんな読後感が得られる一冊。