あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

三池 終わらない炭鉱の物語

監督:熊谷博子

三池 終わらない炭鉱の物語 [DVD]

三池 終わらない炭鉱の物語 [DVD]

HP紹介より

1997年3月30日、日本で最大の規模を誇った三池炭鉱は閉山しました。でもその歴史を、「負の遺産」と言うひともいます。囚人労働、強制連行、三池争議、炭じん爆発事故・・・。過酷な労働を引き受け、誇り高くやまに生きた男と女たちの証言を聞き続け、7年がかりで完成させました。勇気をもって命がけで生きること。そのひたむきな力。今さらではなく、今だからこそ未来への思いを込めて伝えたい。


150年以上にわたる、三池炭鉱の歴史に、初めて正面から向き合った映画です。

 観た。

 山川の詳説日本史では欄外で扱われる「三井三池炭鉱」での争議は日本の労働運動史に永遠に残るだろう規模および影響の大きかった事件だと思う。
 日本の近代化政策に石炭の果たした役割と三池炭鉱の歩みは当然のことだが、ぴたっと一致している。そして、労働運動と、三池炭鉱で働く労働者の生活も当然ながらぴたっと一致する。特に三池炭鉱は他の炭鉱とは違って三井によって開発が進められた経緯もある。日本近代史で欠くことの出来ない三井財閥と、戦後の「 総資本 対 総労働 」の最も中心にある現場が三池なのではないか。

 150年の三池炭鉱の歴史はそのままイコール日本の近現代史の一側面だ。

 だがこの映画は三池争議だけではなく、三池炭鉱で生活する歴史の表舞台に立つことはなかった人びとの息遣いを丹念に追い続けたドキュメンタリーに仕上がっている。
 三池は負の遺産だと地元の人間で言うものがいるという。だが、そこで生活をしてきた人びとや、炭じん爆発事故によって生活を一変され、その後苦しい生活を患者と共に歩む家族など、国や企業と闘い、また困難に耐え続けてきた人びとの生活、炭鉱後に残る息遣いは決して負の遺産なのではなく、懸命に生きる人びとの誇りの跡でもあるだろう。

 これはドキュメンタリーだから、ハッピーエンドに終わるわけでもバッドエンドに終わるわけでもない。しかし、見終わった後に残る、暖かくも苦い、そして哀しみをも綯い交ぜにさせられる、力作である。
  
 なお、三池争議を振り返る労働組合幹部の妻の「向坂(逸郎)さんに私たちはモルモットにされた」という回顧が、個人的には労働運動の難しさを永遠に問い続ける言葉に感じられた。