あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

渋すぎる表紙 3月のライオン8巻

3月のライオン 8 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 8 (ヤングアニマルコミックス)

精一杯頑張った人間が
最後に辿り着く場所が
焼野ヶ原なんかであってたまるものか!!
時が経てば焼け野っ原には
嫌でもまたあっとう間に草がはえ
一面の緑になる
それを一緒に見るんだよ!!

 このところ全然マンガの感想もおざなりにしていたので、書いてみる。
 まさかの爺さんが表紙の8巻。表紙の人物は主要登場人物とはお世辞にも言い難い、柳原棋匠・66歳である。
 実際には、棋匠というタイトルはないし、66歳でタイトルホルダーというのも現実では厳しいのだけれど(大山康晴が59歳で棋聖だったのが最高齢かな?)、それはとりあえず置いておいて。

 8巻の半分が零と宗谷名人との対局に充てられているが、後半部分は島田8段と柳原棋匠との棋匠戦の様子である。
 この表紙に爺さんからまとわりついている包帯のようなものが、実は「襷」であり、彼の同期で一緒に歩んでいきながら、無念にもその世界を断念せざるを得なかった仲間たちの想いであることを読み進めるウチに知ることが出来る。

 引用したセリフは、敗着を予感させる状況になったときの柳原のセリフである。
 このセリフが出てくる前に、柳原の「戦友」たちは、一人、また一人と(将棋界に限らず)現役から退いてゆき、仕事を奪われた男たちにはあたかも焼け野が原のように何もない世界になってしまった寂しさを抱きながら、最後に残った柳原に自らの夢を託している。
 ここには必ずしも結果を残すことが出来なかった者たちへの柳原の優しさが溢れかえっている。とくに「焼け野が原なんかであってたまるものか」というくだり。そこには(繰り返しになるが)同じ夢を持ちながら、心ならずも断念せざるを得なかった、彼らの想いとその人生を、柳原自身がよく解っているからこそ、彼らの人生を絶対に否定させてはならないという決死の思いがある。だからこそ、執念の塊のようになりながらも、永世棋匠を賭けた最後の大勝負にまさに全身全霊を賭けて挑み続けるのだ。

「さよならだけが人生だ」
誰が言ったんだっけ
せいせいとしたいい言葉だ...
1人ずつ欠けていくことも解っている
将棋からも人生からも
でもな 俺は覚えている
好きなヤツも 嫌いなヤツも
山程いたが 間違いねえ
今の俺はその全部のカケラでできている

 対局が終わった後の、みんなで写真を撮るくだりもまた、彼の生き方が表象されているようでイイ。