あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

日本の歴史〈22〉大日本帝国の試煉

 労働運動史が専門の著者が、東大経済学部長時代に執筆した日本通史の一冊。タイトルからはややわかりにくいが、色川大吉による前巻『自由民権運動』をうけて、明治中頃の立憲政治確立期から、明治天皇の死までをカバーしている。近代は政治史・法制史畑の研究者が通史を書く場合も多いが、本書を執筆した1960年代では、この時代の政治史研究がまだ固まっていなかった。そのため、労働運動史の著者に依頼が来たという。そういう経緯もあって、他の出版社によって書かれたこの時代の通史に比べると、一般的な事象に留まるきらいはある。
 たとえば、この後に出版された通史では、坂野潤治佐々木隆ら政治史ど真ん中な研究者が執筆している。政府首脳の構想などは、そちらを参考にした方がより正確に理解が出来るだろう。しかし、労働運動史の研究者ならではの「民衆の視点」「政治における運動の側面」に充分目を配った通史として、圧倒的な存在感がある。日本の資本主義成立をめぐる考察や、また、社会問題への豊富な記述はまさに面目躍如だ。その意味で言えば、より「通史」としてのスタンダードなものだと言えるだろう。