あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

福田歓一『ルソー』(岩波現代文庫)

ルソー (岩波現代文庫)

ルソー (岩波現代文庫)

 西欧政治思想史研究では知らない人はいないほどのビッグネームによるルソー解説書である。ルソーは著作によって、結構言っていることが異なっていて、仲正昌樹のようにそれを統一的に捉えることはかえって、ルソーの魅力を削ぐものだから、矛盾は矛盾として受け止めていく立場もある。ただし、福田は正統派の中心にいるような学者であったから、当然ながら、そうした一見すると矛盾しているかのように見えるルソーの著作の中から、共通する要素を掬い上げようとしている。逆に言えば、それが本書を難しくしている要因かもしれないが・・・。
 本書の前半部分はルソーの生涯を追っている。後半は学問芸術論・不平等起源論・社会契約論などメインにルソーの思想を解説している。さっきも書いたとおり、これらに共通する文明批判とその克服としての社会契約などの枠組みが極めて厳密に論考されている。正直、この部分は思想史プロパーでないと難しいと思う。まず「はじめに」から読んで、次いで巻末の「付論」としての講演会の原稿を読んで、吉岡知哉の解説を読んでから、本論に入ると読みやすいと思う。

 この分量だと期待するのは無い物ねだりなのだけれど、個人的には『山からの手紙』や『孤独な散歩者の夢想』までを射程に入れて、どういう考え方なのかを論じて欲しかった。(多分、仲正が厳密な意味での共通する思考をルソーにはふさわしいと考えてないのは、この辺もあるのだと思う。自分も個人的にそっちの側なので・・・。)