あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和

 国際政治哲学の視点から様々な概念が内包する平和主義について論じた著作である。トルストイのように宗教的基盤から生まれた絶対平和主義とラッセルのような外交政策としての平和優先主義との区別は今まで平和主義を論じた著作には少なかったように思う。とかく理想的、現実不可能のレッテルを貼られがちな平和主義ではあるが、本書を読めば充分にそのスタンスは現実的であることがわかる。丸山眞男が指摘するように日本では単なる既成事実主義が現実主義であるかのように捉えられ、政治思想としてのリアリズムが不在である。
 そうした政治思想、政治哲学上の貧困さが、平和主義と現実主義(アイデアリズムとリアリズム)との噛み合わない論争を続けてきたのではないだろうか。他にも義務論、帰結主義、正戦論、人道介入主義との対比(対話)を含めて、決して無責任ではない、一面では厳しい覚悟のいる平和主義のアウトラインを描いていると思う。