あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

シューリヒトの英雄

 私用で都内に出た折、新宿のタワーレコードに寄ったら、シューリヒト指揮の「英雄」が980円だったので思わず衝動買いしてしまった。シューリヒトのベートーヴェンと言えば、パリ音楽院管弦楽団を振ったEMIから出ている演奏があるが、モノラル録音で、後年に録音されたブルックナーの8番や9番より随分とガッカリする録音だった。
 それに比べると、このCDは放送録音だという割に、非常に良く録れたステレオ録音であり、混濁感もなく「ステンドグラスのような」とか「均整美のとれた」というwebでの評判がそのまま当てはまるような演奏になっている。
 もっとも、フルトヴェングラートスカニーニ、朝比奈のような演奏を日頃から聴いていると、このシューリヒトの英雄は軽すぎるようなきらいもある(それを好ましく評価する人は「ステンドグラスのような」という表現をしているのだろう)。フルトヴェングラーや朝比奈なんて、ピラミッド的なバスをしっかりと鳴らしたピラミッドのような音が出てくるが、ここで聞くことの出来る演奏は、中腰気味な、重心の高い演奏である。それで言えば、ブーレーズマーラーはまさにそんな感じだろうと思う。
 しかし、颯爽と、何もしていないようでいて、普通なら緩くて聴けない演奏だけれど、聴き通せるのはまさに枯淡としか言いようがない。まったく感心することしきり。繰り返しになるが、多分、それを可能としているのも、1963年の実況録音によるステレオ収録というのが大きい。フランス国立放送管弦楽団も健闘しているし、他にもいくつかの録音が残っているから、相性の良いオケなのだろう。
 良い買い物であった。