あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

山口二郎『いまを生きるための政治学』

いまを生きるための政治学 (岩波現代全書)

いまを生きるための政治学 (岩波現代全書)

 山口二郎北大教授(当時)による「入門 政治学」といった内容である。山口氏のスタンスが批判理論としての政治学というところもあって、現状に対して規範的な理論ないしはアプローチを意識的にしている。そこが読み手を選ぶところだろう。そういうのが嫌なら有斐閣の『政治学』や佐々木毅政治学講義』(東大出版会)を読めばいいと思う(両者は良くできているが「教科書」的な硬さ全開だ)。とは言っても、山口氏の専門は行政学であって、行政を政治の中に位置づけ、文章として表現する手腕はとても上手いと思った。
 そして、政権交代論者として、民主党の理論的支柱ともなった山口氏の自戒を込めた考察も面白い。ここでは55年体制での、クリーンなリベラル、汚い保守のような思考を批判し、リベラルの側もその潔癖症的な発想を脱し限られた資源や現実可能な選択肢からよりマシなものを選択することの重要性を述べている。時事的な要素が強いために時代が経つと古さを感じさせてしまうかもしれない。講義で聴けば無類のおもしろさであろう。