ブルックナー交響曲ツィクルス第4回
東京オペラシティコンサートホール
指揮:飯守 泰次郎(桂冠名誉指揮者)
ブルックナー:交響曲 第8番 ハ短調 ノヴァーク版第2稿1890年
飯守/シティpo.によるブルックナーsym.8番。
単純に言えば、非常に感動的な演奏会だった。やっぱりブルックナーはヘンにテンポを弄らない方がイイな。以前、N響アワーで池辺晋一郎が語っていたけれど、ブルックナーはモチーフを煉瓦を積み上げていくようにして曲を作る。
さらに金子健志が指摘するようにその繰り返しによっていたずらにテンポを弄ることなく内的テンションが高まる演奏が求められる(というかブルックナーのスケール感が表現出来る)。それで言えば、今回は完全に模範的な演奏である。1楽章からオケは内声部も存分に鳴り、スケールの大きな演奏だ。自分はアダージョで音階が上がっていく箇所で思わず涙が出そうだった。終楽章の冒頭も極めてハッキリと弦の力強い刻みからスタートしてしっかりとした骨格が終始維持されている。
以前に同コンビでブルックナーツィクルスをした時はもっと動的なブルックナーだったが、今回はかなり「待ち」の姿勢で指揮していた。それでも緊張感を失うことなく最後まで持続出来たのは長年のコンビによる賜物だろう。今にして思うと、ワーグナー演奏者としての飯守ならではのブルックナーではないか?
和声の処理や、それでも時折聴かせたアッチェレランドなどはそれを彷彿とさせる。しかし、聴いている最中は完全に「ブルックナーを聴く」心地よさを感じていた。8番の実演では朝比奈の極めつきの実演を聴いて以来、どうしても他の指揮者でも比較してしまうことがあるのだけれど、今回は思い出すこともなくブルックナーを味わえた。(とはいえ、自分のなかであの時の演奏は生涯忘れることが出来ないのであるが)
オケもホルンなどにミスはあったものの、ティンパニはじめ大熱演である。無い物ねだりをすれば、個人的にはハース版が好きだという事を再確認したくらいか。
あと、自分の隣に座っていた高齢の男性は完全にフライングブラボーをしていた。確かにイヤな予感はしていたんだよな。曲の盛り上がりで拳を胸のあたりまで持ち上げるほどのっていたからなぁ。おかげでかなり興ざめしてしまった。
きっとガマン出来ないんだろうねぇ・・・。こまった年寄りだ。