あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

元禄港歌-千年の恋の森-

 どこまで蜷川幸雄が直接、演出できたのか難しいところがあるけれど、近松的世界観とシェイクスピア的世界観が合体しているような不思議な感じだった。
 とは言いつつも、大店を舞台にした働き者の兄と放蕩者の弟という、落語的な定番の設定に、兄の母親は実は盲目の芸妓だったという身分的などうしようもなさが合わさって、何とも「哀しい」作品に仕上がっている。椿が天井から落ち、大がかりなセットが組まれ、客席通路も使用する。ともあれ「らしさ」全開だった。

元禄のころ。播州のある富裕な港町は陸へあがった船頭を相手に客を引く男女などで賑わっている。
いつも町の若者を引き連れ羽振りをきかせている【万次郎】は廻船問屋の大店・筑前屋の次男坊。今日も些細なことから町人との揉み合いが始まった。そんな時、筑前屋の長男【信助】が江戸の出店から戻り、弟をいさめる。そこに二人の母親、女将の【お浜】も現れる。交錯する母息子の視線。
そこへ三味線の音。手引きの【歌春】を先頭に座元の【糸栄】、【初音】、それに続く女たち。旅から旅に明け暮れながら年に一度この港町にやってくる瞽女の一団である。
その晩、筑前屋の座敷で弾き語られた瞽女たちの「葛の葉子別れ」。千年の森の奥から恋しい男のため白狐となり逢いに来た女が、人里の男を恋した罰に生まれたばかりの子と別れて再び森に帰らねばならぬという悲しい物語。涙ながらに語る糸栄に、信助の心に熱いものが去来する。母恋しさに心乱れるまま、初音に、自身の出生に疑いを持っていることを口走り、糸栄のことを問いかける。何も答えずに去る初音。
同じ夜。万次郎はもう三年の仲となる歌春と逢っていた。それに感づいていたお浜は、職人の【和吉】を歌春の婿にと引き合わせ、二人の仲を裂こうと画策する。その報告を夫の【平兵衛】にしているなか、信助の出生に関して、思わず恨み節を口にするお浜であった。信助を不憫に想う平兵衛と、実の子万次郎を店の後継ぎにしたいお浜、烈しい夫婦の諍い。
一夜明けて、阿弥陀堂では虐げられている念仏信者たちと共に、信助を幼少期より慕う初音、万次郎への想いを断ち切る決心をした歌春、我が子信助への思慕を隠し通そうとする糸栄らが、一心に念仏を唱えている。
次第に初音に心惹かれて行く信助は、同時に糸栄が自分の生みの母であることを確信していく。
数日後。筑前屋では、万次郎が舞う奉納の能楽の準備が進められている。そこへ、歌春から万次郎との関係を聞き及んだ和吉が血相を変え怒鳴り込んでくるが、権高に追い払う筑前屋の面々であった。謹慎を受けた万次郎に代わり信助が務める能楽が始まった、その時。客席から黒い影が飛び出し、能面を付けた信助に毒壺が投げつけられる―