現代思想は難解なんかじゃない―高田明典『世界をよくする現代思想入門』を読む
- 作者: 高田明典
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 新書
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「現代思想」という言葉を聞いて、すぐにアタマにイメージが広がる人ってほとんどいないんじゃないかな。哲学・思想の中でもどのへんからが現代思想か判断するのは学者によってマチマチだし、そもそも何を言っているのかが分からない。
このあたりを勉強している人にとっては「当たり前」で、これといって全く難しいことはないんですが、まず一般の、いわゆる「フツーの人」にとっては意味が分からないことこの上ない。
そもそも現代思想の目的っていったい何なんだ?という疑問さえ湧いてくるヒトもいるでしょう。そうした疑問に対して著者は現代思想の目的を「世界をよくするため」だとします。
そして、「世界をよくする」ために各自がそれぞれの思考を展開している。だから、人によって表される概念や言葉がマチマチで、結果、何も知らない読み手は混乱してしまうというのです。
では、「世界をよくする」という目的がハッキリ分かっていれば、思想家によって異なる概念や言葉も、目的が同じであれば、その目的を達成するための手段に過ぎないとわかり、現代思想を身近に感じることができる、としています。
管理人の専攻分野である政治思想・理論でも現代思想の概念を援用したりしてこのあたりを一通り押さえておかないといけないと思っていたので、思いこみの修正やきちんと理解していなかったことが分かったのでヨカッタです。はい。
「基礎付け主義」やウィトゲンシュタインの「言語ゲーム論」とその帰結。「構造主義」とか「脱構築」などなど。現代思想を彩る、重要且つ予備知識ゼロな人でも読めるように、身近な例を挙げ、分かりやすい言葉で説明している本ですね。
そしてその結果、たどり着いた帰結は、あまりにも当たり前な感じも受けますが、「そもそも論」から説き起こしてみることで、実は非常に説得力を持つことが分かり、現在議論されている様々な問題に対して自分なりに考える第一歩となることでしょう。
巻末にかかれた、用語辞典とブックガイドもこれから勉強したい人にはオススメです。
逆に、知っている人にとっては、今更読まなくても良い感じではあります。