戦争の中、人はその不滅なる力を信じようとした@都響定期演奏会
東京都交響楽団 第626回定期演奏会
2006年5/15(月)19:00 東京文化会館
指揮:ヨゼフ・スウェンセン
ピアノ:ニコライ・ルガンスキー
ニールセン:オペラ『仮面舞踏会』序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
ニールセン:交響曲第4番『不滅』
アンコール(チャイコフスキーの後)
ラフマニノフ 練習曲「鐘の音」第8番
北欧の小国、デンマークの作曲家、カール・ニールセンの代表作とも言うべき交響曲第4番「不滅」は多くの人命が失われた第一次世界大戦の最中に発表された。
西洋音楽史的にみると、第一次世界大戦の時期になると大作曲家とよばれるヒトの多くは鬼籍に入るか、作品を書かなくなる。ちょうど、当時隆盛を誇るかに見えた「西洋文明」が目の前で音を立てて崩壊していくかに見える、それが第一次世界大戦を経験したヨーロッパ人に共通した感覚だったのだろう。
そうした時代の雰囲気を象徴するのがシュペングラーの『西欧の没落』だったわけで、ヨーロッパ全域が戦場となり、歴史上初の総力戦となったこの戦争のすさまじさを物語る。
あー、ちなみに、総力戦(total war)っていうのは戦争遂行のために、政治・経済・文化等、あらゆるものを根こそぎ動員する戦争の事。近代以前の戦争は分かりやすく言えば、関ヶ原の合戦みたく、戦闘行為をするヒト(日本だと武士身分)と何にもしないヒト(それ以外の農工商人)が分かれていた。しかも、武士は農工商人に協力を求めたりは出来なかった。今やってる、NHK大河ドラマ「功名が辻」をみてるとイメージしやすいのでは?
それに対して近代以降はその国の持てる力全てを戦争に捧げるものだから、戦争は直接その国民の生死に関わるという戦争の認識を大きく変えたということになる。
そんな総力戦下の第一次世界大戦に戦争の脅威に曝され(小国デンマークはドイツに侵攻されてしまう)ながら、ニールセンは人間の意志の強さや人間の可能性、また、音楽の持つメッセージ性などを合わせて「不滅」という曲を作った。したがって非常に象徴的な音楽だと思う。
これが、戦意高揚の曲だったら、今ではその価値はなくなってしまうだろうが、先に挙げた要素は人間が生きている限り持っている「人間の強さ」のようなもので、曲自体に生命力があるのだろう。
この文章を読んで、興味を持つヒトがいたら、近くの図書館に行ってニールセンのCDでも借りて聴いてみてください。とりわけ第4楽章がオススメなので、その部分だけ聴いても良いかもしれませんよ。
って、ここまで演奏に触れなかったのは、あまりパッとしなかったから。良くなっていたんだけれど、どうもスウェンセンの演奏って管理人の琴線に全く触れないので、良い曲にもかかわらず感動できなかった。
「何でこんな箇所でテンポを上げるの?」とか「音量が一本調子じゃないか」とか聴きながら思ってしまったくらいなので。どうもスウェンセンとは相性が悪い感じ。
ピアノ協奏曲も、ピアノの良さに比べて、オーケストラの伴奏が一体何をしたいのだか良く分からない。せっかくルガンスキーをソリストに迎えているのに活かされず、言葉悪く言えば台無しと言う感じだった。
ルガンスキーは良いですよ。長身ゆえに恵まれた指の長さから、変幻自在とも言うべきタッチで華のある曲をさらに華々しく「魅せる」。何年か前にラフマニノフの協奏曲を聴いたけれど、やはりロシア作品は自分の血肉になっている感じでしたね。実に堂々としていて素晴らしい。
ピアノを弾いている姿も映えるし。外山啓介ピアノリサイタルの時は小ホールで今回は当然の事ながら大ホールだと言うことはありますが、基本的に文化会館に変わりなく、その為か残響に今回も不足するところはありました。が、ルガンスキー、意図的にいつもより(ダンパー)ペダルを踏んでいるのかな、と言う感じを聴きながら受けましたね。オペラシティで聴いたときはそこまで印象的な踏み方をしていなかったと思うので…。
ともかくスウェンセン、個人的には来年以降は違うオケを振って頂きたいと思います。ヒトは良さそうだから、そこが悲しくなるところですけれどね。
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さて、いよいよ火曜、法務委員会で共謀罪の採決はされるのか、注目です。
こういう日は他にニュースをぶつけて目立たなくするという常套手段もあり得るので注意が必要でしょう。