フランスのロマン派をどう捉えるか!?@都響・「作曲家の肖像」ベルリオーズを聴く
東京都交響楽団 東京芸術劇場シリーズ「作曲家の肖像」Vol.60 <ベルリオーズ>
2006年6月17日(土)14:00(13:20開場)東京芸術劇場
曲目
歌劇「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲 作品23
夏の夜 作品7 *
幻想交響曲 作品14
久しぶりの池袋芸術劇場シリーズ。管理人の家からだと池袋は電車一本で着くため上野同様に気楽な感じがします。ウチから出ても1時間以内にホールの座席まで座れるくらいですからね♪
指揮のジョアン・ファレッタはアメリカで活躍する女性指揮者。ピアニストやヴァイオリニストと違って、クラシックの分野でもまだまだ女性指揮者は少ないのが現状です。確かに、指揮者はピアニストやヴァイオリニストとは違って、「60歳はハナ垂れ小僧,70歳でやっと一人前」なんて言われ、「巨匠」なんて言われるには80歳でも矍鑠と活躍を続けている必要があるみたいです。
それを考えると、女性で80歳を過ぎて活躍というのはなかなか体力的に辛いものがあるのか、はたまた80歳過ぎで大勢の聴衆の前に出ることを恥ずかしいと思うのか、いまだかつていないのが現状です。
でも、大ピアニストのマルグリット・ロン、エリー・ナイは80歳を過ぎても活躍していましたし、ヴァイオリニストでイダ・ヘンデルが84歳にして昨年、別府アルゲリッチ音楽祭で堂々と弾いていることを考えると、女性指揮者が「巨匠」と呼ばれるのもそう遠い未来の話ではないかもしれませんね。
さて、今回はオール・ベルリオーズプログラム。ベルリオーズは時代様式からいえば「ロマン派」に属する作曲家。シューベルトよりも後でショパンよりも前に活躍した作曲家といえます。
「ロマン派」ですから、作風は当然「ロマン風」なわけですよね。分かりやすく言ってみれば、厳格な「型式」というものがあった古典派の理論を受け継ぎつつ、人間の感情を自然に作品に反映させる主観的・感情的な作風というところです。
しかし、ドイツロマン派とは違って、ベルリオーズはフランスの作曲家というのも併せて考慮しなければいけません。つまりタイトルにあったとおり「フランスのロマン派」としてどう演奏するか?と言う問題があります。
特にベルリオーズの幻想交響曲は名指揮者や巨匠によって数多くの録音がなされていて、名演も多いです。
演奏の傾向は大きく分けて2通りあると思います。一つはフランスの作曲家という側面を基軸にするもの。フランスのウィット感ではありませんが、ベルリオーズの作風は重厚で強固な構成感というよりもパレットに多くの色があって、それが様々な場面に応じて豊かに使われているような、イメージだと捉えやすいと思います。
もう一つは、ロマン派の解釈として、その主観的感情を抉っていこうとするもの。
今日のファレッタは典型的に後者の解釈をしていました。しかし、そこはフランスの名匠ジャン・フルネの薫陶を30年に渡って受けた都響、弦を中心に非常に「フランス音楽の響き」が感じられました。
(幻想交響曲は恋愛→失恋→服毒自殺を図る→意識を失う中、魔女の宴に加わる→そこに恋人が現れる…という幻想を見ているというストーリーがあります)
特に魔女が出てくる第4楽章からが非常に出来が良かった。
本当にデモーニッシュ(悪魔的)な響きが生まれ、管理人は本当に久しぶりに客席でひとり鳥肌が立ってしまいました。凄い演奏を聴くと全身に鳥肌が立つので、そこら辺が管理人にとってのパラメーターになるんですが、今回はまさにそんな感じ。
だから、第4楽章→第5楽章は本当にこの曲に表現されるデモーニッシュな感じとオーケストラの響きと相俟って実に感動的でした。
幻想交響曲中心のコメントでしたが、前プロを。
「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲はローマの謝肉祭ほどではないけれど良く演奏される曲。とてもレベルの高い演奏です。夏の夜は詩をベースにした室内楽。全6楽章構成。詩がとてもロマンティックでそこには喜怒哀楽が込められているんですが、実に安心して聴けました。メゾ・ソプラノの加納悦子は仏語の発音に難があるようにも思えるのですが、歌唱力は素晴らしかったです。
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