- 作者: 三井環
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/07/21
- メディア: 新書
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検察の「裏金」問題を告発しようとして、マスメディアに実名で公表しようとしたところ、番組収録の3時間前に逮捕される。
そんな経歴の著者が、5つの特捜検察の関わった「無理筋」事件について、その内部事情を推し量った上で解説し、検察に存在する重大な問題点をあぶり出す。
以前紹介した 郷原 信郎『検察の正義』(ちくま新書)』でも紹介したが、「特捜部」とは検察内部における「特別捜査部」のことだ。通常、検察は警察の捜査した事件を精査し、その事件が起訴に相当するか判断する役割を担うチェック機関なのだが、特捜部は、警察とは無関係に独自に捜査、立件できる権限を持つ組織である。
そもそも検察が暴走するようになったか、といえば、著者の見立てによれば、それは著者が暴露しようとした検察内部の裏金問題が存在するという。この裏金問題を政治問題化させないために、元・内務官僚にしての「カミソリ後藤田」の異名を持つ、後藤田正晴(元・法務大臣、官房長官)に掛け合い、協力を仰いだという。著者はこの行為を「けもの道」と表現する。つまり、検察は当時の自民党政権に対して、大きな「借り」を作ってしまったのだ。
取り上げられている事件は次の5つである。
鈴木宗男事件
日歯漣事件
朝鮮総連事件ビル詐欺事件
小沢一郎事件
郵便不正事件
これらの事件で、検察の取り調べ手法やマスコミ対応などを著者は批判する。
たとえば、鈴木宗男事件であれば、マスメディアに対して、予め公式会見以外の場でも情報提供を行う、いわゆる「リーク」を行い、リーク情報によって、世論の風を吹かせることで、捜査しやすくなる、という面がある。
鈴木宗男事件は受託収賄罪についても、贈賄側の時効である3年が成立しており、収賄側の5年の時効のタイムラグが存分に使われる格好となった。逆に言えば、贈賄側はどれだけ違法な行為を過去に行ったか告白したところで時効は成立しているわけで、検察側とすれば完璧な証言調書が作成できる。裁判は検察と弁護側の「どちらの論理に整合性があるかを判断」する場所であって、新たな事実を探究