- 作者: 猪木武徳
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 新書
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著者は阪大などで教鞭と取り、日本経済学会会長なども務める人物。
戦後世界経済史についてはじめに読むべき1冊だ。
新書としては異例の分量(400ページ)であるが、一気に読み進められる。それは著者が世界経済についての基本要素(つまるところ一種の「理念型」)を摘出し、過不足無い説明を加えることによって成立するところが大きい。「世界経済史」ということになると、各地域の経済を研究する研究者によるアンソロジー的なものでお茶を濁すパターンがほとんどだが、ひとりの研究者が、その一貫した視点で世界経済史についての見取り図を書いた方が、一般の読者にとっては分かりやすい。
ただし、その場合、著者に相当な力量がないと、これだけのテーマを扱うことは出来ない。しかし、本書はそれに見事に応えている。
なによりも新書サイズにも関わらず、いわゆる「北側」だけの経済を扱うのではなく、社会主義国や中南米、アフリカなども扱われる。
副題の「自由と平等の視点から」とあるように、どの水準の自由と平等が経済社会に影響を与えるのか、先進国や途上国、社会主義国の歴史を俯瞰することで考えさせるようにもなっている。新書レベルではまさに出色の出来である。