あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

劇場版ヤッターマン


【ネタバレに注意】
 シネマサンクスデー1000円ってことなので観てきた。

 アニメやマンガの実写映画化で今まで楽しませてもらった作品の方が少ない。これはドラマも同じである。一番最近でいうと、日本テレビでドラマ化された『神の雫』だろう。

 常々いうことだけれど、人気のある原作(コミック)を実写化すれば数字(視聴率)がとれるだろう、という番組プロデューサーのアタマの悪いとしかいいようのない浅はかな発想のもとで、どれだけ魅力のある原作が駄作ドラマとなって世に出たことか…。
 先に挙げた『神の雫』でも、実写ドラマ化するプロデューサーと監督がその原作のファンでもなければ、作品に対するケアフルリーディングもないので、「その原作のどこに大衆が面白さを感じているか」を読み取ることが出来ないのだ。

 それに引き替え、今回の実写版ヤッターマンは「日本映画も本気でやればこれだけ出来る」ということを証明する作品である。「実写版スパイダーマン」並みの出来を誇っていると言い切れるだけの満足感が得られる作品なのだ。
 つまりこういうコトだと思う。三池崇史が子どもの頃からその原作(この場合アニメ版ヤッターマン)を見て育ち、自分が映画監督になったらこの作品を実写映画化したいという夢と構想があって、初めて原作の持つ雰囲気を壊すことなく、実写化のエンターテイメント性を確保した作品を作ることが出来た。三池の執念にも似た意気込みがスクリーンから読み取れるのである。

 オープニングからヤッターマン的演出の連続である。
 
 渋谷ハチ公前ならぬ、渋山(みつばち)ハッチ公前で繰り広げられる戦闘。
 「日本の女は美しい」という某シャンプーのCMならぬ「日本の男は美しい」のコピー。ラッパを吹くロボットが壊れても、手に持ったラッパは離さなかったところなど、木口古兵の「シンデモラッパヲハナシマセンデシタ」のそれである(知らないヒトは「古口古兵」でググってみて)。

 もちろん、大筋としてのヤッターマンvsドロンボーという構図は当然あるし、子どもが楽しめるようなストーリー展開やアクションもある。しかし、実のところ、至る所に散りばめられている小ネタはまさにヤッターマンを観て大人になった世代にこそ対象としたモノであり、大人のエンターテイメントとしても充分な内容を持っているのだ。

 それはラストに阿部サダヲ(父親)が岡本杏理(娘)に「子どもは分からなくて良いんだよ」と優しく諭すシーンに集約される。絶対に子どもには分からない大人のネタである。そう、ビールがうまく感じるには大人にならないといけないのだ。

 キャストでいうと、深田恭子ドロンジョが予想を裏切る良い出来だった。もうちょっと持って回った感じが出れば尚更良かったのが悔やまれる。(深田の「人形」っぽさは相変わらず今回も健在。)それ以外のキャストも総じて良かった。もっとも、というか案の定というか、「表紙のヒト」ヤッターマンよりも「影の主役」ドロンボー三人組の方がキャラクターも濃く、こちらの方が面白い。
 また、CGを使っているので、ドクロベー、オモッチャマ、などの声はアニメ通り滝口順平を始めとする声優陣がアテレコしてこれも良い感じだ。なお、ドロンジョ、トンズラーの声を担当する小原乃梨子、たてかべかずやが原作総監督笹川ひろしと共にカメオ出演している(八奈見乗児は顔出しNGだから出ない)。
 
 エンターテイメントとして考えれば1000円でここまで楽しめられ、とても良かった。