あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

追悼・若杉弘

以下の記事は毎日新聞より。この記事が他紙と比べても一番的確だと思う。

訃報:若杉弘さん74歳…新国立劇場オペラ芸術監督

2009年7月21日 23時35分 更新:7月21日 23時52分

 ヨーロッパと日本でオペラ界を切り開いてきた指揮者で新国立劇場オペラ芸術監督の若杉弘(わかすぎ・ひろし)さんが21日午後6時15分、東京都内の病院で多臓器不全のため死去した。74歳。葬儀は近親者で行い、お別れの会を後日予定している。

 東京生まれ。慶応大経済学部に進んだが中退して、東京芸大の声楽科に入り直し、さらに指揮科に転科して卒業。在学中から二期会のオペラ公演など指揮者として目覚ましい活躍を見せた。ワーグナーのオペラ「パルジファル日本初演の指揮により毎日芸術賞も受賞した。

 小澤征爾さんと同い年で並び称されたが、若杉さんは当初からオペラを目指した。ワーグナーの「ラインの黄金」を日本初演するなど、「初演魔」と言われるほど、日本の音楽界で遅れていたオペラに次々に光を当て、現代のオペラ・ブームの基礎を築いた。

 77年からはヨーロッパにも進出、日本人としてドイツ語圏で初めて名門、ケルン放送交響楽団の首席指揮者に就任。その後もライン・ドイツ・オペラ音楽総監督などドイツのオペラ界で活躍。80年度にはオペラ指揮の成果によって2度目の毎日芸術賞を受賞した。

 95年にN響正指揮者、96年にびわ湖ホールの芸術監督、07年には新国立劇場の芸術監督に就任、再び日本のオペラ界の振興に全力を傾けた。

 昨年秋から体調を崩し、今年6月の公演も降板していた。サントリー音楽賞(86年)、芸術院賞(92年)など多くの賞に輝いた。マーラー交響曲など多くのCD録音がある。【梅津時比古】

 去年に、急性膵炎になって入院→演奏会キャンセル、という情報を得てから心配していたのだが、まさか亡くなるとは思わなかった。まだ74歳。指揮者としてはこれから円熟を迎えるだろう時期だけに残念でならない。
 都響の常任指揮者としてマーラーの全曲演奏に取り組み、最近は新国立劇場音楽監督としてオペラを振っていただけに、任期途中での急逝は絶句というほかない。

 とはいえ、管理人はついぞ、若杉の指揮でオペラを聴くことがなかった。それが何とも心残りである。


 毎日新聞のおくやみに経歴もあるように、若杉の特筆すべきところはクラシックの本場ヨーロッパで下積みを経験した指揮者である、ということ。小澤征爾ウィーン国立歌劇場音楽監督になったことでかつて騒がれたが、小沢の経歴自体からすればオペラはメインではなかった。その反対に、ドイツのオペラ場で経験を積んだ若杉は日本人ながらヨーロッパでも通用するオペラ指揮者であった、と言うことができると思う。

 管理人と若杉の接点はそれほど多くない。それでも都響の定期会員をここ数年続けていたから、若杉の演奏を相応に聴いてはいる。一番最初は大阪フィルによる朝比奈の追悼演奏会となった東京公演のブルックナーの3番だ。この時の演奏は3番だったからこそ良かったのだと思う。
 まったく奇を衒うことなく、それでいて、ブルックナーらしい、質実剛健っぷりだった。
 都響で最初に聴いたのは、所沢で聴いたマーラーの5番。マーラーとともに煩悶するような演奏ではなく、古典的なフォルムを大切にしながら、クライマックスに向けてテンションを持っていくような、「静」の指揮ぶりが印象的だった。
 その後、都響とはベートーヴェンの英雄や、ブラームス弦楽四重奏曲のオーケストラバージョンなどがある。ただ、この時の印象は真面目すぎる演奏で、聴き応えはあったものの更なるスケールなり、パッションが欲しかったように思わせる演奏だった。良くも悪くも「理性的」な演奏だということか。それがマーラーだと成功していたのは、おそらく後期ロマン派に位置づけられるマーラーの曲にそもそも内在している情感があったからだと思う。反対に古典派の演奏では、良くアナリーゼしてあるけれど、今ひとつ振る舞いきれない印象を与えてしまったのだと思う。

 最後に若杉の演奏を聴いたのは、これも都響による現代音楽のシリーズの回だった。別宮貞雄の協奏曲と交響曲が中心の演奏会だと思う。いま、そのエントリを見返してみると、ここに書いてあることと同じようなことが書いてあって苦笑してしまう。
http://d.hatena.ne.jp/takashi1982/20060119 

 ともあれ、浮ついた人気ではなく、実力派というか職人肌の渋い指揮者がいなくなってしまった。とりわけオペラの分野にとっての損失は非常に大きい。元気になってもっと聴かせて貰えると思っていただけにな…。
 今日はN響とのブルックナーの3番のCDを聴いて偲ぼうと思う。

 ご逝去を悼み、謹んで哀悼の意を表します。素晴らしい演奏をありがとうございました。

ブルックナー:交響曲第3番

ブルックナー:交響曲第3番

若杉/都響 マーラー交響曲全集

若杉/都響 マーラー交響曲全集

追記

正指揮者を務めていたNHK交響楽団では追悼番組をやるらしい。

N響アワー
ETV 8月2日(日)後9:00〜10:00
【曲名】交響曲 第9番(マーラー 作曲)ほか

『FM40クラシックスペシャル N響特選アーカイブス』
FM 8月3日(月)後7:30〜9:10
若杉さんの追悼コ−ナーを設け、「テクスチュアズ」(武満徹 作曲)を放送予定。


N響演奏会』ほか
BS hi 8月9日(日)前6:00〜
第1575回 N響定期公演 (2006年9月9日 NHKホール)
【曲名】パッサカリアウェーベルン 作曲)
交響曲 第9番(マーラー 作曲)

 我が家はBSハイビジョン映らないぞ。どーいう事だ。観られないじゃないか!!